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地方が豊かになるためには

 

私たちの『広告批評』という雑誌は実は広告に関する内容は、3分の1ぐらいで今の時代の様々なテーマについて、いろいろ考えたりするようなことが多いんです。その中で数カ月前ですが、沖縄の独立をシミュレーションするという企画をしました。3年くらい前に、「これからの日本をどうするか」という夢物語みたいな企画を、お正月にやりました時に、これは半ば遊び半分で、放談会をやったんですが、そこで、沖縄を独立させようという話が出てきました。その時は何をバカなって笑い話にしていたんですけれども、その後、沖縄独立論というのがマスメディアでまじめに書かれたりするようになってきました。じゃあ、それなら本当にそんなことできるのかをシミュレーションしてみようということになったのです。その結果は、現実には国家として独立させることは大変難しいんだけれども、方向としてはステイツにすることはできるんじゃないか、ということになった。まあ、その詳細は省きますが、その中で、作家の池澤夏樹さんに沖縄独立についてのインタビューをしたんです。この方は東京にずっと暮らしていた方なんですが、沖縄が好きで最初は旅行者として行っているうちに、すっかり沖縄のフアンになって、もう3年ぐらい沖縄に住んでいて、ついに家を建て始めたという作家の人です。
彼の話の中で、やっぱり沖縄も、補助金行政の中でずいぶん辛い思いをしているという話がありました。これはみなさんご存知だと思うんですが、沖縄というのは1人あたりのコンクリートの消費量が世界一だそうです。基地の代償ということもあるんでしょう、公共投資というのが沖縄はとりわけすごいわけで、そのことをやっかむ人たちも中にはいるかもしれないけれど、その公共投資が本当に沖縄に住んでいる人たちの幸せのためになっているか、豊かな生活のために生きているかと考えてみると、どうもそうではないらしい。海洋博がありましたけれども、あの時は地元も大変喜んだ部分もあったらしい。しかし、その終わった後は、地元は倒産と借金で苦しむ人が大変増えたんだそうです。リゾートマンションとかホテルとか建ちますが、それらは全部中央の資本がやってきたもので、そこに飛行機でお客さんを連れてきて、その周辺だけで遊ばせて、食料も全部本土から自分たちで調達してきたものを持ってきて食べさせ、お客さんを連れて帰ってしまう。沖縄にぜんぜんお金が落ちないわけですね。ですから、大きな資本、中央の資本は儲かるけれども、地元はちっとも豊かにならない。
公共投資も、そういうリゾートホテルとかリゾートマンションなどに役に立つような道が優先的に造られたりして、そのお金によって地元の人たちが豊かなことになっているかというと、どうもそうとは言えないようです。実際に倒産が増えたらしいし、借金づけの人も増えたらしい。それから、それまでの沖縄というのは大企業などありませんでしたから、いわゆるサラリーマンがいない、それで失職ということはないし、就職難というものも言ってみればないわけです。家族同士で仕事をしているということが多いわけです。ところが、中央の資本が入ってきた後には失業者がたくさん出るようになってきた。おそらく沖縄でも、日本の中央というか、東京的な価値観で考えた時の豊かさを求めた人たちもいたんだろうと思うんです。でも、飛びついた結果が、そんなことにもなっているという現実がある。もちろん沖縄の全部には敷衍できないと思いますけれども、そういう側もあるわけです。秋田で聞いた話ですが、最近、大型店が、盛んに進出してきていて、私の知っているある地域では、それまでの地元の商店はもとより、地元でやっていたスーパーなども巨大な郊外店にお客さんを持っていかれ、その大型店はコンピュータ処理で、その日のうちにお金が全部中央に持っていかれてしまう。

 

 

 

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