予算と家計簿の違いは
予算の問題ですが、国の予算だとか、県や市町村の予算とかになると、私は金額が大きすぎて見当もつかないので、いっそ身近に家計簿の話にしてみたいと思うんです。
例えば、家計簿だったら、お給料など毎月入ってくる収入はある程度決まっているわけです。その中でそのやりくりする時には、今、自分たちの生活にとって何を最優先すべきか、これは今ほしいけれどもこっちは少し後回しにしようとか、これはローンで買おうとか、いろいろ知恵と工夫を出し合って考えると思うんです。余分な物はとりあえず買わずに、お金が余ったら次のあの事をするために貯めておこうとか、そういう発想って当然あると思うんですが、予算となると使ったが勝ちで、使い切らないと次の予算が取れないという悪循環がずっと続いている、そうしたことにみんな乗っかっているわけですね。自分だけ、いい子っていうか、良心的であろうとするのは、非常に難しいことなのかもしれないけれども、そういうところの見直しからスタートしていかなければならないと思います。縦割行政のひずみなんていうことも再々言われているわけですが、そうした行き当たりばったりは、地方分権の時代になったらできないと思った方がいいという気がしますね。
岩手県、あるいは盛岡市やさまざまな市町村において何を最優先させ、何を後回しにするかという、卜ータルな計画、10年あるいはもっと先を見据えた時間を入れた構想力みたいなものを皆さん自身が持たないと、実は地方分権は現実化していかないんじゃないかと思う。私たちは無駄遣いを、ある意味ではずいぶんしてきているんじゃないかという気がするんです。東北は、やはりインフラ整備など後回しにされてきましたし、こちらにもっとよこせという気持ちになるのは、とってもよく分かるんです。けれども、こちらは観光が収益の中でも大きな部分を占めると伺いましたが、今、岩手県が観光地として脚光を浴びているとすれば、それは、ある意味では言葉は悪いんですが、遅れていた部分があった、そのことが実は今、観光立国として成り立たせている大きなポイントだろうと思うんですね。
私の日ごろの仕事は、広告を年がら年中見ている仕事なんですけれども、JR東日本の広告などで、岩手はいろんな形で紹介されています。そこでみんなが見ていたり、岩手に行ってみたいなと思わせているものは、近代的な設備とか橋とか道とか、そういう物ではなく、やはり手つかずの自然であったり、美しい沼地であったり、水辺であったりというようなことです。もちろん、そういうものを大事に地元の方たちだけが保存して、不便せよというつもりはなくて、下水道とか基本的なインフラは当然、整備されて然るべきだろうと思うんですが、こちら特有の何か大事なものがやっぱりあるはずなんですね。そういうことを発想の中に入れて優先順位みたいなものをぜひ考えてほしい、これは、もちろん岩手県だけじゃなくて、どこの県にも固有の何かがあるはずですから、お互いがそのことを意識の中に入れながら考えていかなければいけない時代なんじゃないかな、という感じがします。