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生活をしながら、もっと長く自然を深く理解するための活動ができないものだろうかと和歌山県で自然教室を始めました。最初、田辺からバスで2時間半ほどかけて、山の中に入り、先ほど紹介いただいた熊野古道の道筋に当たる中辺路町の野中という小さな集落で昭和42年に廃校になった校舎を運よく買わせていただくことができ、教室を開くことができました。

その教室の様子をきょう見ていただきますが、その中で、私たち自身、より自然に負担をかけない暮らしというのはどういうものなのだろうかということに気がついていった過程をスライドで見ていただきたいと思います。

(講演のご当地を褒め上げるというのは常のことなんですが、)和歌山は私にとって第2、第3のふるさとに当たるようなところです。先ほども和歌山県のパンフレットを見せていただいて、和歌山県というのは冷温帯のブナ林から暖かい海まで、非常に広い範囲のきれいな森、美しい川、澄んだ海というものが存在することを改めて確認して、本当に幸せな18年間だったと感じております。

 

以下 約100枚のスライドを使って和歌山県の中辺路町で行われた「自然教室」について講演が行われた。

 

【紀伊半島の川について】

 

紀伊半島の自然は、もともと照葉樹林の中に黒木と言われた針葉樹林が混じっている、非常に変化に富んだ自然のある森でした。照葉樹のシイやカシは1年じゅう色が変わらないのですが、その中に時たま落葉樹が入って、ちょっと控え目な紅葉を見ることができます。紀伊半島の場合、非常に古くから植林の歴史があって山が安定しているので、多少の雨が降っても水が濁らないという特徴があります。

 

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自然教室の中で川の行事というのは非常に重要なプログラムであり、おかげで、毎日きれいな川に出かけることができたわけです。

紀伊半島の川はとても美しいので、私が10年ほど前に川の絵本を作ったとき、迷うことなく紀伊半島の川を選びました。

森の一番の恵みは、きれいな、豊かで冷たい安定した川の水だと思います。私たちは、まず森の豊かさと水の大切さを何とか学んでもらいたいと思って自然教室を続けたのですが、まさに紀伊半島、和歌山県というのはそれにぴったりの場所でした。

川にはさまざまな環境がありますが、特に大事なのは川の岸辺といいますか、水と陸が接する場所というのは非常に大切なところです。ところが、近年の河川工事で一番影響を受けやすいのがこの場所です。ですから、川岸に草をかぶっている状態の場所というのは非常に少なくなりました。ただ、生き物にとっては、草をかぶって適当に隠れる場所、例えば、海では「魚つき保安林」がありますが、そのような場所と同じように川にもそうし生き物の隠れ家となる植物と水が接する場所が必要であり、我々もそういった場所をもっと大切にしていきたいと考えております。

教室では、こういうところに潜ったり、魚や生き物を探したりするということで、それを理解していくわけです。

 

 

 

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