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基調講演

 

演題「自然とのふれあい」

ナチュラリスト・自然写真家 姉 崎 一 馬 氏

 

こんにちは。きょうは、お招きいただきましてありがとうございます。

私は、自然を愛する者として、和歌山県という博物学の巨人・南方熊楠の土地で自然教室を今まで18年間続けたことは非常にうれしいことです。私は、生まれは東京ですが、すぐ北海道の札幌郊外に移り、小学校2年までおりました。その後、再び東京に戻り、小学校3年生からつい最近まで、40年間、東京で過ごしておりました。北海道から東京へ戻って来た私は、それまで北海道の非常に豊かで荒々しい自然の中で物心がついていましたので、東京の自然という、いわばおとなしい自然の中に浸ってしまい、そのギャップの大きさにかなりショックを受けました。

ところが、北海道から東京まで1,000キロ近くあって、北海道で図鑑ばかりを見ていた昆虫少年にとって和歌山は今まで図鑑でしか見たことのないモンキアグハとかネムノキの赤い花があり、初めてこころ訪れた時なんて南の方に来てしまったのだろうと感じました。

亜熱帯の森林や、照葉樹林のシイ、カシの森を撮影をするために九州に行ったときのことです。和歌山県と同様、九州もミカンの産地です。和歌山のミカンは、北で収穫されるミカンであることを聞いて驚きました。

 

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姉崎一馬氏

ナチュラリスト、自然写真家。1948年生まれ。9歳まで札幌郊外で育つ。東京農業大学造園学科卒業。自然保護運動にかかわる中で「自然教室」を始める。1975年より18年間にわたって和歌山県中辺路町で自然教室を開く。中辺路町の豊かな自然を舞台に自然と親しむための様々なイベントを開催し、こどもたちと自然のすばらしさを体験している。現在は山形県朝日連峰山麓に「わらだやしき自然教室」を開校してる。公演では、自然教室、自然写真家としての体験を通してアウトドアのマナー向上について語る。

著書は「姉崎一馬の自然教室」(山と渓谷社)など多数

 

このように日本の自然というのは、南北に3,000キロということで非常に変化に富んでいます。そうした自然が年々失われてきてしまって、その自然の大切さ、豊かさを何とか知っていただきたいということで、私たちは当時、自然保護運動をしている会に所属していました。しかし、大人の方にいろいろなことを言っても、大抵の方はもう自分なりの生活の中でポリシーというものを持っております。例えば、歯を磨くとき、コマーシャルのように練り歯磨きをチューブの端から端までたっぷりと出すとか、磨いている間、蛇口の水を止めないということは、感覚としては余り当たり前過ぎて、それを指摘したところで自分の感覚に訴えることがありません。その点、子供についてはまだそういう習慣が完成していないので私たちの意見に耳を傾けてくれます。ある意味では、私たちはもう大人の方をあきらめて、次の世代を担う子供たちに何とかいい自然体験をしてもらい、良い生活習慣をつけて自然を大切にしていただこうということで、自然観察を始めました。

ただ、自然観察ですとその日一日のイベントで終わってしまい、生活に結びつくことができていません。それで、今から約25年くらい前に、

 

 

 

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