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んから口移しのように教わってしまうのですね。そうしたら、その子はどうだろう。ミミズを見ていつも、嫌いだな、ミミズがいたらパッとよける、ヘビを見たらパッとよける。

いいかい。ヘビというのは、環境指針動物なんだ。ヘビのいるところがあるね。でも、人間がそこに入っていろいろな開発をして、とんでもないことをやると、ヘビはあっという間にいなくなる。では、ずっといなくなるかというと、そうではない。その環境にその人間の営みがなじんできて、ある程度時間がたってくると、またヘビが出てきてくれる。つまり、ヘビがいるところというのは、生きものたちにとって非常にいい状態。生態系として非常にいい状態。それをみるのは、ヘビ。それから、ミミズ。ミミズを嫌いにならないでね。

ミミズというのは、ぼくは息子と木を植えてきました。そのときに、最初はミミズなんてぜんぜんいませんでした。ほんとうに瓦礫だった。どうしようもない瓦礫のところに、木を植えてきました。それが、樹木というのはすごいです。3年、4年くらいたったときかな、息子とまた土をいじっているときに、ミミズを見つけた。「やった―、ミミズがいたよ、パパ」と息子が呼んだ。つまり、ミミズのいる土というのは、ほんとうに豊かな、生きものたちにとってすばらしい土なんだな。土というのは、生きものたちの集大成が土なんだな。

そういうすごい生きものたちを、どうぞお母さんたち、「キャーッ」といって嫌いにさせないでください。それで嫌いになってしまったら、その子は一生そういう目でそういう生きものたちを見ます。それを、差別といいます。差別というのは、最低の下のもっと下だね。人間を差別するなんてことは、もちろんここにはみなさんいらっしゃらないでしょうが、人間だけではない。生きものたちを差別しないでほしい。それが、「生きもの地球紀行」のフィロソフィです。

どうしよう、もう終わります。(笑)けれども、このまま終わってしまってはあれなので、1か所だけ読んで……。ぼくは、話すのはへただけど朗読はうまいよと、このごろ褒められています。(笑)プロの朗読というのを一発やって、それで帰ります。

きょうはお歳を召した方も多いから、あえてこれを読みます。『八ヶ岳クラブ森と暮らす、森に学ぶ』。もし気に入ったら、買ってやってください。1,500円です。(笑)べらぼうに売れている本なのです。

「親から子へ、子から孫へ。ぼくに学ぶことの楽しさを教えてくれたのは、おじいちゃんでした。まだ小さいころから、本の名前や性質、扱い方、植え方、手入れのしかたなんかをずいぶん教えてもらいました。それで、素地はできました。でも、そのうちに、おじいちゃんから教わるだけではもう一つ物足りなくなってくるんです。それで、本を読む。じつはぼくは活字人間で、本を読むことが大好きなんです。本を読み続けて、疲れてくると、今度は植物図鑑をながめる。そうやって、名前を覚えていくことから、自然との接点は始まります。いまぼくは子どもたちに、植物の名前を一つずつ教えています。おじいちゃんから教わったように。その子どもたちというのは、ぼくの家の近くに住んでいる友人たちの子どもたちとか、八ヶ岳クラブに遊びに来た子どもたちなんですけれども、ほとんど幼稚園に入るか入らないかくらいの年齢から、小学校低学年くらいの子どもたち。このころの子どもの頭って、ほんとうにすばらしい。どんどん覚えちゃいます。それで、どんどん聞いてきます。ときどき、ぼくにもわからない花があると、ぼくは子どもといっしょに林に入るときにいつも図鑑を持参していくんですが、その場で子どもたちといっしょに図鑑をひいて調べるんです。子どもたちには、どんなに面倒くさいときでもきちんと向き合ってあげなければいけません。とくに、ものを教えてあげるときにはかならずです。物知りのおとなのふりより、真剣な態度に、子どもたちは尊敬のまなざしを向けてくれます。ぼくが中学2年のとき、初めてここに降り立ったとき、村の人びとがそうしてくれたように」。途中は割愛します。

「こんなふうに、植物のことを勉強すればするほど、いろいろなことがわかってくる。と同時に、わからないことがもっともっと出てくる。どこまでも深いんです。だからぼくは、少しずつ少しずつ学んでいく。そして、死

 

 

 

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