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ぬまぎわになったときには、よりー所懸命学びたい。そんな人生をおくりたいと思います。ぼくにいろいろなことを教えてくれたおじいちゃんは、最後までぼくに教え、そしてぼくからも学びながら、天寿をまっとうしました。ぼくの父も、亡くなる寸前まで、農学部に通っていたぼくの長男の真吾から、大学で学んできたことを一所懸命聞いていました。もうあと何日という身体の状態になっていながら、『真吾、どんなことを勉強してきた?先生はどんなことを教えてくれた?』と聞くんです。そこには、ぼくの入る余地はなかった。かわいい孫との会話を楽しむというより、それは父の生きざまそのものだった気がしてなりません。そしてぼくも、いよいよおじいちゃんです。真吾に子どもが生まれます。ぼくは、おじいちゃんが、父が教えてきたように、ぼくの孫に教えようと思います。それは、生きものたちがどんなにステキなものかということ。だから、ますます一所懸命勉強します。そして、ぼくの孫や友人たちの孫にも教えて、それも、『おじいちゃん、それ去年聞いたよ」、『おじいちゃん、3年前にも聞いたよ、『おじいちゃん、5年前にも聞いたよ」、『おじいちゃん、10年前にも聞いたよ」というくらい、しつこくしつこく、しつこく教えたい。それで、20年くらいたって、ぼくが知らない植物のことを孫が学んできたら、ぼくが孫から教えてもらって、そうやってこれからの人生をおくっていきたいんです。高齢化社会の問題がさけばれていますけれど、ぼくも含めてこれからは、おじいちゃん、おばあちゃんの時代だと思います。やっぱり父親というのは、なかなか経済という座標軸から離れられません。切ないもんです、父親という存在は。その座標軸からちょっとはずれた、おじいちゃん、おばあちゃんの出番なのです」。

ご清聴ありがとうございました。

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