っとご覧になった方は多いと思います。あのなかで、人間の脳というのは二つある。つまり、古い脳と新しい脳とがある。新しい脳は、いわゆる言語野といいましたか。いまぼくがペラペラくだらないことを話している。この言語野、これが新しい大脳皮質。
そこはどういうことをつかさどるかというと、「いまぼくがこのように話していたほうがのちのち有利になるかな」とか、「いまこういうグループとこのような根回しをしておいたほうがのちのち有利に展開するかな」とか、クラスに帰って、「いまこういうふうにおもしろおかしいジョークをいいながら、ひょうきんをやっておいたほうが、みんなの人気者になるかな」とか。それって、つらいよね。子どもたち、つらいと思う。あんなに人とペラペラ話しながら、いいあんばいにつきあいながらいなければ仲間はずれにされるという、いまの状況ね。
まさに言語野、新しい脳細胞です。
もっといいますと、政界、財界、学界、いろいろな意味で先端に立っていらっしゃる、われわれをリードしている人たちというのは、その言語野の非常に発達した人たちだと思ってください。
一方、古い脳というのはなにをやるかというと、きみも経験したことがあるだろう、恋をしたことがあるかい。ないか。少年はないそうですが、もうすぐある。お姉ちゃんはあるね。ない? かならずある。人間は100パーセント恋をする。きみはステキな女性と、きみはステキな男性と出会ったときに、どうしようもなくなってくる、身体中が。いまでも恋をしていらっしゃる方はおおぜいいらっしゃると思う。なんとも切ないような、なんともウーンという感じがあるんだよ。(笑)いつかわかるかな。あの感じね。なんとも幸せな、なんとも切ない、なんとも説明のしようのないものがあるではないですか。あれがまさに、古い大脳皮質がつかさどっているわけですね。
人間も生きものだったという、生きものの名残が、その古い大脳皮質に連綿と残っているわけですね。だけど、新しい脳がどんどん発達して、どんどん肥大化させないと、いまの世の中は生きていけない。そこに闘いがあるわけですね。そこに、精神のバランスを欠いてしまう人たちがそうとういるわけですね。私の身内にもいます。どうしても精神のバランスを崩してしまう。そして、病院に入れられたりする。
もっといいますと、現代人は、その古い脳と新しい脳との問いなのですね。おわかりでしようか。ただ、それをなんとか薬で抑えている。バランスがなんとか取れるように抑えている。それが現代なのですね。ですから、精神がややバランスを欠いた、やや、ふつうの私たちの常識からちがうことをいってしまったり、ちがう行動になってしまう、私の身内、友人、そして子どもたち。彼らは、もっといえば、とても生きものらしい人間なのですね。
そうなのです、これはぜひみなさん。そうなのです、これは科学です。福祉でもなんでもない、これは科学なのです。そういうのが、いま現代なのですね。