があることについては、「これまでは知事の仕事の7、8割が機関委任事務であったものが、勧告が実現されると全体としては比率が逆転し、7割が自治事務となる点を評価すべき」と述べられ、分権委員会の努力に対する理解を求めた。また、国税と地方税の税源配分の見直しが抽象的な表現にとどまった点に触れ、地方分権推進委員会としても、税の間題に踏み込んだ議論を行いたかったが、本来、税制調査会が扱うべき課題であるとの意見から控えぎるをえなかったと発言された。
さらに、沖縄の米軍基地問題で大きな議論を呼んだ駐留軍用地に係る土地の使用・収用の事務については、外交、防衛の問題であることから、国が責任をもって処理すべき問題であると判断するとともに、地方事務官の扱いについても悩んだ末に国に戻すべきだと勧告することにしたと述べている。
しかし、「勧告に示した内容は一つ一つ各省庁と詰めてきたものであるため、100パーセント実現できなければならない」と述べ、勧告の実現性については自信を覗かせ、今後は、監視に重点を移し、勧告の実現に向けて力を注ぐとしている。
最後に、分権委員会の仕事は住民自治の確立という目標から見れば、出発点にすぎないが、実現に向けて世論の支持を得たいと述べて講演を締めくくった。
全体を通して、非常に要領よくまとまった内容で、かつ、わかりやすい語り口であったことから、一般の住民の方々にも地方分権の全体像が理解できるものであった。また、地方自治に携わる我々自治体関係者にとっても、これまでの分権議論の論点を再整理し、認識を深めるうえで大変意義のある講演であった。
パネルディスカッション〜個性あふれる豊かな地域社会を目指して〜
税財源問題
パネルディスカッションは、コーディネーターの川島氏が、まず、パネリストから諸井委員長の講演に対する感想を聞きだし、それぞれの間題意識を浮かび上がらせつつ、討論のポイントを絞り込んでいくという、巧みな進行で始まった。
まず、荒巻知事が勧告には上下・主従の関係であった国と地方の関係を対等・平等の関係に転換するという姿勢が貫かれていると評価しながらも、財源問題に触れ、「税財源の問題が一番の不安材料だ」と述べた。また、野中町長からも、「諸井委員長のご苦労は察するが、財政的な裏付けが明確でない点は不満が残る」とし、大方の予想どおり税財源問題が第一の論点となった。
さらに、荒巻知事は、地方自治体の課税自主権が制約されていることが、住民の自治意識の醸成を阻んでいる面があることや、補助金に依存せざるを得ない現行の地方財政制度においては、地方自治体が補助事業の必要性を厳しく吟味するインセンティプに欠ける面があることなどの弊害を例にあげて、真の地方自治の確立のためには地方への財源の抜本的な委譲が不可欠であると訴えた。
これに対して、分権委員会のメンバーである森田教授は、財政問題が不十分であった点は否定できないと認めつつ、委員会としては現行制度を抜本的に変えることよりも「現行