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方となる場合については、基本的に国と一般私人の関係における諸制度(行政手続法・行政不服審査法・行政事件訴訟法等々)がそのまま適用されてよいであろう。それに対し、地方公共団体が固有の資格において国の関与を受ける場合については、それを制度上どのように取り扱うかがまさに問題となるわけである。

ところで、地方公共団体が一般私人と同一の資格において国の行為の相手方となる場合については、行政手続法・行政不服審査法・行政事件訴訟法等の適用上、国の行為が公権力の行使に当たるかどうか、つまり“権力性”の有無が法的に重要な意味をもつことになるのであるが、地方公共団体が固有の資格において関与の相手方となる場合は、上述のところからすれば当然にはそうはならない。しかし、一般に言われているところに従えば、ここでも、権力的な関与と非権力的な関与とがあるとされる。ただし、“権力的・非権力的”ということの意味をどう捉えるかについて問題がないわけではなく、また、いずれにしても、国のある一定の関与が“権力的”かどうかが微妙であるような限界的な場合は、種々生じうる。

 

*勧告の基本的趣旨――関与の縮減と法治主義の強化

さて、地方分権推進委員会により、国の関与についても種々の改革が勧告されたのであるが、委員会勧告の基本的な趣旨は、第1には地方公共団体に対する国の関与の縮減と、第2にはそれらの関与を法の規律に服させるという意味での法治主義の強化という、2つの点にあると言ってよい。

このうち第1点に関しては、(1)まず、委員会勧告が従前の機関委任事務の制度を廃止したうえでその相当部分を自治事務にするとしていることは、機関委任事務制度のもとでの国の機関の包括的指揮監督権にもとづく関与を否定し、後に述べるような自治事務に対する限定された関与の制度で置き換えることにほかならないのであって、それにより国の関与の大規模な縮減がもたらされることになる。従来機関委任事務であったものをそれぞれ自治事務にするか法定受託事務にするかという、地方分権推進委員会が最も多くの労力を費やして各省庁との折衝を重ねたいわゆる事務区分の問題は、その実際上の意味からすれば――条例制定権の認否やその他の問題もないわけではないが――何よりもその事務について認められるべき国の関与の程度の大小の問題であった。(2)次に、これまでの機関委任事務制度に代わるものとしての法定受託事務の制度においても、国の関与は機関委任事務について認められていたのよりも限定される。(3)さらに、以上の機関委任事務制度廃止に関係するもののほか、勧告では、従来機関委任事務以外の地方公共団体の事務に対して個別法で認められている国の関与についても、以下で述べる一般法主義の原則との関連においてかなりの縮減または整理を行うこととしている。

他方、さきの第2点に関していうと、委員会勧告は、「国の関与の一般原則」として、?法定主義の原則、?一般法主義の原則、?公正・透明の原則の二つを掲げ、そのうちの法定主義および一般法主義との関係で「国の関与の類型」について、また、公正透明原則との関係で「国の関与の手続等」について、それぞれ述べている。そして、さらに、国の関与をめぐる争いに関しての「国と地方公共団体との間の係争処理の仕組み」を示している。これらはいずれも、国の関与についての法的ルールの整備とその正しい適用の確保、つまり、一言でいえば国と地方公共団体との間における「法治主義」の強化を目的とするものであると言ってよい。そして、勧告では、「国と地方公共団体との関係のル―ルに関する一般法」なるものが予定されており、上記の諸項目のうちのいくつかについては、この「一般ルール法」にそれを規定することとする旨が明記されている(ただし、現行地方自治法との関係等をも含めて、この「一般ルール法」がどのようなものになるのかは勧告ではいまだ詰められていない)。なお、前述のような、地方公共団体が地方公共団体としての固有の資格においてではなく一般私人と同一の資格において国の関与の相手方となる場合については、ここにいう一般ルール法の問

 

 

 

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