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国の関与の原則と関与類型

―地方分権推進委員会勧告に即して―

小早川 光郎(東京大学法学部教授)

 

一昨年12月から昨年10月にかけて出された地方分権推進委員会の第1次〜第4次の勧告(以下では、「委員会勧告」、または単に「勧告」という。)は、従前の機関委任事務制度の廃止を中心としてさまざまな内容を含んでいる。本稿では、そのうちで特に地方公共団体に対する国の関与の問題に焦点を当て、与えられた紙幅の範囲内で多少の考察を加えることとする。

 

*“国の関与”とは何か

“地方公共団体に対する国の関与”という表現の意味するところは、従来必ずしも一定していない。それは、広義においては、国の立法の形で行われる“立法的関与”と、国の行政機関が行う“行政的関与”と、国の裁判所による裁判を通じて行われる“司法的関与”とを含めた全体を言うが、狭義ではそのうちの行政的関与に相当するものを指す。地方分権推進法の用語法も同様であり、その5条では、「地方公共団体又はその機関の事務の処理又は管理及び執行に関し、国の行政機関が、地方公共団体又はその機関に対し、許可、認可等の処分、届出の受理その他これらに類する一定の行為を行うこと」と定義されている。なお、そこにいう「これらに類する一定の行為」とは、解説によれば、許可、認可、承認等を求めさせ、措置命令、指示等を発し、監査、検査等を行い、届出、報告等を求め、勧告、助言等を行い、又は協議を求める等の行為がそれであるとされる(総務庁行政管理局企画調整課=自治省行政局行政課編・逐条解説地方分権推進法52頁・58頁)。

 

*どのような種類のものがあるか

以上の意味での、地方公共団体に対する国の関与には、さまざまな種類のものがある。いくつかの側面から考えてみよう。まず、法的根拠の観点からは、?地方自治法(245〜252条)などの一般法にもとづく関与、?一定の事務に関する個別法の規定による関与、?法令の規定はないが地方公共団体に対する国庫補助金交付等の法律関係にもとづいて行われる関与、?以上のような法的根拠なしに行われる関与が、それぞれありうる。

また、当該関与が対象としている事項の個別性・一般性という観点からは、?個別条件の処理に関する事前または事後の関与、?個別案件ではなく一般的に一定種類の事務に係る事務処理組織のあり方や案件処理の方法・基準等に関して行われる関与、?さらにひろく、特定の事務の範囲を越えて当該地方公共団体の組織や運営のあり方一般について行われる関与が、それぞれ考えられる。

次に、また別の観点からは、一方で、国の関与が、法令上、地方公共団体が地方公共団体としての固有の資格においてする活動に関して行われることとされており、言いかえれば地方公共団体がその固有の資格において関与の相手方となる場合と、他方で、そうではなく、もともとは一般私人に対して行われるような国の行政機関の行為(行政処分または行政指導を行う、届出を受ける、等々)に関し、その相手方としてたまたま地方公共団体が一般私人と同一の資格で登場する(行政処分または行政指導を受ける、届出をする、等々)という場合を、それぞれ区別することが可能である。もっとも、地方分権推進法における関与の定義は、この両者を特に区別することをしていない。 しかし、仮にこの区別に則って考えるならば、地方公共団体が一般私人と同一の資格において国の行為の相手

 

 

 

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