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パネルディスカッション

「分権型地域社会の創造に向けて」

 

篠崎 島森さんからは、貴重な提言をいただきました。まず第3次勧告(当日の時点)までなされた地方分権の状況について、その印象から何います。

小笠原 人間の価値観が多様化して、精神的な豊かさを求める時代となり、21世紀は自然や文化、環境との共生を図って行かなければならない状況となっています。その点、私たち山村にとっては、いよいよ出番だなと大変勇気づけられているというのが地方分権の印象です。反面、財政力の弱い町村はどうなのか。最近では受け皿論が出て、ここにきてまた中央のものさしをあてられているという一種寂しきも覚えています。

小早川 戦後間もなくして、国の中では地方優先、地方の中では市町村優先という主張がされ、地方自治の問題も議論されてきました。しかし、ここ数年は従来と違った根本的な改革を議論するようになっています。それが地方分権です。50年間言われ続けてきたことがいま大きく取り上げられるのは、さまざまな条件が整ったからだと思います。

中原 地方分権は、国と地方を対等の関係に改めようというのですから評価できます。これに対し、全国的な統一性の確保とか公正を保つためには、いまの地方分権論には問題があるという中央省庁側のクレームがあるとも聞いています。しかし、基本的には住民に身近な問題は自治体が担うべきだと思いますから、推進委員会には初志を忘れずに、大胆な提言をどんどん出してほしいですね。

堀越 私は仕事のほかに、生活介護ネットワークという団体に属していて、二年ほど痴呆性老人のデイサービスをしています。地方分権の議論が本格化した理由の一つは、高齢社会への対応でしょう。地域によって社会資本も違いますし、人の考え方も違う。それを国が全国一律にやって行くことは無理だと思います。地域でサービスを担う場合、市町村や企業の役割も大きいのですが、それ以上に住民の力が大切です。地方分権が、そういった住民の力を引き出すことに役立つのか、注目しています。

増田 地方分権とは全国的な統一性、画一性の対極にあるものと考えており、地方が自分の物差しや尺度をしっかりと持って、主体的に物事を考えていくことが大切になってきます。これまで続いてきた国、県、市町村の関係や今までの体制を変えるのだから、始めから混乱なくうまくいくはずはないと思います。ただ、摩擦や斬轢を乗り越えてでも進めなければならないものだと考えています。

篠崎 いわゆる受け皿論や地方自治体の役割、住民参加など、いろいろな問題がでましたが、まず機関委任事務の廃止に関して、その狙いや意義をお聞きします。

小早川 機関委任事務の制度は、もともと国の事務であるものを知事や市町村長が代わりに行うというもの。今回の勧告では、それらの事務を一部は法定受託事務とするほか、ということよりは、国の関与を減らすことで自治の質的な拡充を狙ったものです。機関委任事務の廃止と同時に、国の施策に対する自治体からの意見の申出をはっきりさせることと、法令の解釈など意見の対立があった場合の処理の仕組みを整備する必要があります。

篠崎 機関委任事務の廃止は、今後自治体運営にどのように影響を与えるとお考えですか。

増田 例えば、都市計画など土地利用やまちづくりに関する事務は、特に住民の日常生活に関係するものです。それを国がやりますと、距離が離れていてよく見えません。しかも全国の自治体を少数の職員で担当するわけですから、まちの匂いとか雰囲気がわからず、個性が出し難くなります。このような土地利用に関する機関委任事務が自治事務に切り替わり、実際に地域で暮らしている住民の意志がまちづくりに反映されることによって、地域の歴史と伝統が個性につながってくると考えています。

篠崎 機関委任事務が廃止されると、市町村の役割がこれまで以上に大きくなると思われますが。

小笠原 これまで市町村も県も、それぞれの立場で言い訳をしてきたと思います。職員も上をみて仕事をしていた面は否定できません。これからは対等な立場になり、しかも自分たちで決めなければならないわけですから、住民と一緒に努力をしていかなければならないと思っています。篠崎 機関委任事務の廃止は現場に任せるということだと思いますが、今後の住民活動にはどのような影響

 

 

 

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