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るのではないでしょうか。

はたして地域がこの二つを実現する用意があるのだろうか。経済的な問題を考えると、国税と地方税のバランスなど制度的にも大きな問題を抱えていると思います。

精神的な自立という点では、例えば地方分権を訴えている人たちが、一方で霞ヶ関に陳情を続けているなど矛盾も多い。それをどう克服するかが課題だと思います。

先日テレビで漁港の開発に関した特集をしていましたが、そのなかでマリーナの建設予定地はアワビの漁場で、計画が実施されると生活できなくなると、漁民がインタビューに答えていました。どちらが正しいかわかりませんが、こうした悲喜劇がいまも各地で繰り返されているのです。

もちろん、どの地域の人でも自分たちが豊かになりたいと主張する権利はあります。でも、それを皆が言い出したのではどうにもなりません。そのとき、どれを取り入れるか判断が必要になってくるのです。いままではその判断を誰かに委ねてきたと思うのですが、今後は一人ひとりが判断していかなければならなくなります。ですから私は、地方分権にはイバラの部分が非常に多いのではないかと思っています。

予算の問題になりますが、例えば家計簿だったら収入はたかが知れているので、みな知恵と工夫でやりくりしています。しかし、予算ということになると遣った方が勝ちで、遣いきらないと次の予算がつかない。こうした縦割り行政の歪みは以前から言われていますが、今後はそうした行き当たりばったりのことでは立ち行かなくなります。

これからは自分たちのまちを良くしようと思ったら、自分たちの標を痛めないと。アメリカでは、公園が必要であれば自分たちのお金を出し合ってつくり始めます。私たちはいままで公共的なものは、お上がつくるという考えでした。

自分たちの地域でやっていくとすれば、いままで以上に地域間の格差が広がると思います。むしろそれを積極的に評価し、格差だと思わず地域の個性だと思い直した方がいい。ある価値観では遅れであっても、ものさしを換えれば豊かさの質が違うということにもなるのですから。

私は東京で長く住んでいますが、東京が本当に豊かかというとそうではない。結局は選択の問題で、それぞれの求める豊かさの質が違うわけです。実はそういったことも、地方分権では考えていかなければならないと思います。

ついこの間、雑誌で「沖縄の独立をシュミレーションする」という特集をしました。そのなかで、沖縄も補助金で大変苦労していることがわかりました。海洋博などでは大規模な投資があったのですが、地元にお金が落ちず、いまでは倒産やローン苦に喘いでいるというのです。これも公共投資や補助金に頼った結果だと思います。

地方の方々の目線は、まだまだ東京を見ていると思います。地方はいいんだぞと言いながらも、どこか東京を意識していて自然でない。地方分権は何のためにするかと言うと、最終的にはそこに住んでいる人が豊かになるためですから、もっと地域の特質を考える必要があります。

二つ目の方法論に関して、オリジナルな方法をもっているかという点ですが、例えば3年ほど前から自治省の肝煎りで県のイメージ広告が始まりました。岩手県はつくり方が非常に上手で、私は上位の5本の指に入れました。これも自治省が提唱して、ほとんどが東京の代理店でつくったわけですが、それはプロセスであって大きな問題ではありません。今後それをいかに利用して、そうした人材を地元に育てるかが大切で、これは地方分権にも言えると思います。

岩手には賢治や啄木をはじめ、たくさんの財産があるのですから、足元から発想してほしいし、そうしたことすべてが地方分権に関わってくる、もっと身近な問題としてとらえてほしいと思います。

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