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史があり、1945年の水法で軍・自治体・民間により経営されていた小規模水道の統合・再編成を奨励、1,400あった水道事業は187に減少。1973年の水法では規模の利益を求めて、同一水系・河川流域を所管区域とする10の水管理公社を国有企業として設立しました。この水管理公社の機能は、水供給という単一機能にとどまらず、下水道、河川管理、環境といった水サイクルのほぼすべての分野の管理を行うものでした。しかし、その後国営産業の非効率性の改善要求等により、1989年に水法が制定され、10水管理公社は10水事業会社として民営化され、今日に至っています。

ロンドンの水道の状況を調査するため、ロンドン市内にあるテームズウォーター水会社を訪問し、教育担当者及び設計担当者から説明を受けました。

この水会社は10の水事業会社の1つでイギリスとアメリカの企業による合併会社として設立され、給水区域はロンドンを中心に周辺小中都市を含めた約13,750k?、給水人口730万人、1日の給水量260万m3で、下水処理も行っており、下水処理人口は約1,200万人となっています。また、これらの業務を行う組織。従業員数は、本社・水供給部門6,500人、建設課・サービス部門1,500人、国際部コンサルタント部門2,400人となっています。

民営化後の変化ですが、

?市場……「水を提供してあげるという態度、水に関しては我々が一番知っているから黙っていなさい」が「水の使用者はお客様と意識し、お客様の意見を良く聞くようになったし、電話1本ですぐ苦情処理できるようになった」

?資金……「設備更新ができなかった」のが、20年以上の計画が立てられるようになった」

?管理システム……「命令・管理する人間、様々な組合があり、職員は事業内容により階層化されており、眼が上にばかりいっていた」のが、「焦点は上ではなく、お客様になり、組織もそれに合うようにスリム化したため、組織の中同士うまくいくようになり、上がいなくなったので自分たちがコントロールするようになった。

?器材関係……「購入に当たっては購買専門会社を使う、専門家を使うようになった」

?資材・財産……「エレクトロエクスを使い、パイプの管理、ポンプの状況等を把握できるようになっただけでなく、これから行う事業はすべてお客さんのメリットになるものでなければならないと考えるようになった。

さらに、結果として、優秀な技術者を集めたコンサルタントグループは、ヨーロッパやアジアの諸外国からコンサルタント業務を受注するまでになったとのことです。

次に巨大配水管トンネル「リングメイン」ですが、図にあるとおりアッシュフォード浄水場から始まる地下50mの深さに掘られたトンネルのことで、4ヶ所の浄水場から自然流下で送られた水道用浄水を貯水する円筒形地下貯水槽です。現在のロンドンで、抜本的な改修を行うにも、道路が狭く、交通の遮断ができないことから、リングメインを布設することとなったわけです。1987年工事開始以来約500億円が投資され、総延長は80km、内部の貯水量は50万m3ボ、1日最大130万m3の供給能力を持っております。このトンネルには12ヶ所の立坑(無人ステーション)があり、ここからポンプアップして地上の配水管に送水しています。

 

3. アーヘン市の風力発電(ドイツ)

アーヘン市は、オランダ、ベルギー国境にある人口25万人の鉱工業都市です。アーヘンの風力発電の状況を調査するため、アーヘン市エネルギー上下水道供給公社と風力発電を設置しているアーヘンエ科大学を訪問し、営業担当者及び教授から説明を受けました。

現在、ドイツでは、電力供給量の72%が石炭等の化石燃料であり、環境問題及びそれらの埋蔵量枯渇問題があること、一方、東西ドイツ統合後失業問題が深刻で、国内産業を育成して雇用を創出する必要があることから、風力、バイオマス、太陽熱、太陽光といった新エネルギー開発を進めています。

これらの新エネルギー開発を市場原理に基づいて進めていくには、発電コストが高すぎるため、種々の優遇制度があります。

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