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第11回海外公営企業事情調査団に参加して

岩堀 英道(自治省財政局準公営企業室理事官)

 

はじめに

(財)自治総合センター主催の海外公営企業事情調査団も第11回日となりました。今回も、各地方公共団体の公営企業関係者が多数参加され、7月12日から7月25日までの14日間、オランダ、イギリス、ベルギー、ドイツ、フランスの5カ国を訪間し、調査並びに意見交換を行って参りました。

専門調査は、オランダ、イギリス、フランスの水道事業及びドイツの風力発電事業の調査を行いました。また、これらの専門調査の合間に都市再開発や都市交通、街づくり等についても実地に視察し、多岐にわたる事業についてわが国の現状と比較することができました。

特に、イギリスの水道事業の民営化に関して、「民営化前」と「民営化後」の話を何い、民営化後に住民サービスが大幅に向上しているだけではなく、国際競争力を持った企業として脱皮していること、また、地下50mに建設された巨大配水管トンネルリングメインの発想に驚かされました。

ドイツでは風力発電等の新エネルギー開発を進めるに当たり、国を挙げて種々の知恵を出し、解決していこうとしているのには、環境問題に対する意識のレベルの違いを感じました。

これらは地球環境対策はもとより、財政構造改革及び行政改革が論議されている今日のわが国にとって大いに参考になるもので、大変有意義な調査となりました。

調査結果の詳細については、今後とりまとめる報告書に譲ることとして、ここではその概要と視察に係る雑感を述べることとします。

 

1. ロッテルダム市の水道事業(オランダ)

オランダはライン川、マース川、スヘルデ川の河日のデルタ地帯に位置しており、人口は1,600万で、国上の4分の1の地域が海面より下にあります。オランダの飲料水は地表水が3分の1、地下水が3分の2ですが、地下水の水質が悪化しているため、オランダ政府は地表水に移行させる方針です(地下水の汲み上げ1m3につき45セントの課税)。また、水道事業の効率化及び水質の管理を統一的に行う必要から、合併することを推奨するとともに、ガス、電気事業に次いで水道事業の民営化を進めており、10年前に約100社あったものが現在では30社となっています。

ロッテルダム市の水道事業を調査するため、市内にあるユーロポート水会社及びベーレンプラート浄水場を訪問し、広報担当者から説明を受けました。この会社は株主を水の供給を受けている29の市町村として1992年に9の水道事業体が合併して、設立され、年間給水量は15百万m3で一般需要家とロッテルダム港の工業地帯と温室栽培に飲料水を供給しています。

ロッテルダム市の水道は1991年まではロッテルダム市水道局が給水していましたが、料金の積算が曖味であること、零細で小さな水道事業者が多くあり水質のコントロールを統一する必要があったこと等から民営化されたものです。民営化後の水道事業の従業員は900人から500人に、料金徴収は電力会社と協定を締結し、1つの請求書で水も徴収しています。また、料金は将来の設備投資のための準備金を積み立てるため、この3年3%ずつ値上げをしています。

EUの水質規制は57の物質について規制がありますが鉛を除きすべてクリアしており、現在鉛管の布設替えを行っています。また、ベーレンプラート浄水場では、高品質の飲料水を確保するため、高度処理プラント〔沈殿処理後、急速ろ過池を経てオゾン接触槽を通り、活性炭フィルター(生物処理と吸着処理)を2段通過し、紫外線で消毒をするものであり、必要ならば過酸化水素処理も可能となっています〕のテストを行っています。

 

2. ロンドン市の水道事業(イギリス)

イギリスは、面積約24万k?、人口約5,700万人。首都のロンドンは面積約1,600k?、人口750万人です。この国の上下水道は300年以上の歴

 

 

 

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