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いる以上、行政体制の整備について国が支援するための施策を策定、実施することは国の責任である。

このような地方行政体制を整備していくうえで重要なことは、地方自治の基幹である住民自治をいかにして実現するかということである。地方分権は、本来国の行政機関から自治体の首長や議会への分権ではなく、自治体の構成員である住民への分権でなければならない。それゆえ行政体制の整備においては、自治体の意思決定においていかに住民参加を推進するか、行政運営についていかに住民による統制を有効ならしめるかということが重要になる。

それを有効ならしめるためには、まず住民が自分の住む自治体における自らの負担とサービスの関係を明確に認識しうるような制度、そして健全な財政運営を行いうるような仕組を形成することが必要である。今回の勧告では、具体的な税源の委譲については実現しなかったが、地方債の許可制の廃止、法定外普通税の許可制度の廃止、法定外目的税の創設等はこのような方向に沿う改革である。

また、住民自治を充実させるうえで重要なのは議会の役割である。機関委任事務の廃止によって、条例制定の範囲が拡大し、その結果議会の役割は格段に重要になる。このような状況に応えるためにも、とかくそのあり方に評判の多い地方議会を活性化しなければならない。それには議事運営の見直しや事務局の強化等に加えて、実質的にその機能の強化を図り、長との関係において均衡を図るような改革を行う必要がある。さらに長期的には、地域の政治的リーダーとしてふさわしい人材が議員としてより多く選出されるような議会制度、選挙制度の改革を検討すべきであろう。

議会の活性化によって、住民の声が地域政策に反映され易くなり、住民とのパイプが太くなるといえる。しかし、より住民に近い政府である地方自治体においては、もっと住民の決定への参加が認められるべきであろう。

このような観点からみたとき、最近の住民投票制度の導入を求める要求は、まさに議会を含め住民の声を政策に反映させるべき正規のルートが充分に機能していないことの証左ともいえよう。筆者自身は、機関委任事務が廃止され、その多くが自治事務となる以上、議会の活性化こそまず取り組むべき課題と考える。だが、住民が直接意思を表明する住民投票制度は民主主義の理念に沿うものであり、この制度を地方自治制度のなかにきちんと位置づけることも必要である。しかし、この制度には、すべての課題が一地域の住民による投票になじむとは限らず、それはどのような課題か、また、どのような場合にどのような手続きを経て実施すべきか等、解決しなければならない難しい問題があることも否定できない。この制度を導入し、それを活かすためにも、これらの克服すべき問題点について、充分な検討が必要であろう。

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