・二つには;オリジナルコンセプトの専用船や全く新しいコンセプトの大型浮体施設、機器等の創造、実現化の推進、即ち、造船のみならず、海運等他分野を含めた高度情報化により蓄積された技術の利用により創造的・知的生産性の向上を計る。
6.造船の将来技術
今後は、船を建造する技術と新しい使命の船を創造する技術を、追求して行く必要がある。21世紀に向けて、我々を取り巻く環境、諸条件は、労働問題、国際問題、環境問題、エネルギー問題等大きく変化しつつあり、これらの変化に柔軟に対応する必要がある。特に、地球環境問題に対しては、益々その規制が厳しくなり、その対応に真剣に取り組む事が必要となろう。海洋・大気汚染の防止策、安全確保の規制に対応すべき技術開発も今後の重要な課題であろう。つまり、21世紀の産業社会は、環境・安全・責任の時代となり、地球環境を守る事が命題となる。また、海上輸送に関連する分野でも変革が求められて来るであろう。具体的な変革について特筆は出来ぬが、情報化の進展による陸海の物流を統合したトータル物流システムの構築が必要になるであろう。
以上に挙げた我々を取り巻く環境、諸条件の変化に柔軟に対応する為には、船舶の設計・建造・運航・保守・廃棄の全ライフサイクルを考えた経済性を実現する必要があり、前節で述べたような高度情報技術に支えられた造船技術が重要となるであろう。今後は社会変革と環境問題に対する技術の優位性が競争力の源泉になる。造船に要求されるであろう、今後の主な技術ポイントを挙げてみる。
・海洋・大気汚染問題;NOX,C02などの大気排出削減策に対する技術開発。特にC02排出削減規制が厳しくなる場合の対策は難しい問題となる。石化燃料の使用削減または他のエネルーギー源(例えば水素、原子力等)に替わる機関の開発が必要。
・安全性の確保;環境破壊防止策の強化に伴い、船舶の運航に際しての安全の確保が重要な課題となり、運行管理の強化を計るISMコードの発効、或いはポートステートコントロールによる検査の強化策に対応して行く技術開発。
運航支援機器とヒューマンファクターとの調和を計ったシステム開発。
運航モニター、検査機器等の開発。
・海上輸送の改革;今後世界における陸・海のトータル物流の合理化を追求する時、物流システムの改革により専用船等のあり方が変化するのではなかろうか。特に荷役システムへの変化が求められよう。その変化へ対応すべき柔軟な発想による技術開発の必要性。しかしながら現在の日本造船、海運界には共通の戦略、将来ビジョンを作り、計画を立てて行く制度、システムがない。技術開発と同時に社会制度の改革も課題である。
・建造技術の一層の改革;大幅な抵抗削減船型開発、寿命予測可能な強度解析技術、究極の省力、効率化を計る設計、管理、工作技術。
情報化がドライビングフォース。
この他にも色々な技術項目があろうが、重要な事は開発の進め方に有ると思う。今後多くの技術開発への取組は、造船業界単独で実施するような、タテ割り的でなく、荷主、陸運、海運、港湾業界等との、ヨコ通しの発想を持って、グローバルな体制による開発を実施する事が、より創造的な成果を生み出す事になろう。我が国で創造的な開発が得意で無いのは、何も造船に限った事ではないが、今後より創造的な開発を進めて行くには、ヨコ通しの発想と長期的な視野での価値判断を持って取組むべきであり、人材の育