ります。偉大なる先輩と英知とエネルギーを持った若い世代の人たちとの間に挟まれた私たちの世代は一体何をしていたかということで,いろいろと忸怩たる反省があるわけでありますけれども,特に造船業のマネジメントの方にお願いしたい。若い世代がコンピューターの技術,これは財団のご支援の下,小山先生の御指導などで今もなお次のステップが進められているわけですけれども,その達成したレベルはいかに困難で,そして素晴しく,かつ,未来を切り開くことに繋がっていくかということについて十分評価してやっていただきたいと思います。
最後に,私,日本造船業の将来に対して後輩である方たちにお願いをしたいと思います。
造船学会,造船業界の次の世紀はどういう世紀になるかということ,未来の予測は先ほども皆さんおっしゃるように誰にもできません。しかしながら,地球規模では色んな問題を抱えながら経済は発展して,海上物流は量的に確実に拡大するものと思います。そして,質的にもより複雑に,より革新的に色んな可能性が出てくるのではないか。その意味で我々は活性を失わない限り,日本造船業がなくなる必然性はないと思います。この点では私は極めて楽観論であります。しかしながら,今までの延長線上では未来はないであろうと。私としては,自分がやってきたことの反省に立って,次世代の方に要望を二ついたしたいと思います。
第一のお願いは,日本造船業は,量で,質で世界一かもしれないけれども,本当の意味でのリーディングカントリーであったか。というのは,我々は船のあり方であるとか,品質であるとか,安全の問題であるとか,環境であるとか,そういうことに対する革新的なコンセプトの提案というものをあまりやっておりません。提案されたものをいかに解決するか,解を出すかという,そういうことはやってきましたけれども,みずから問題点を予測しながらそういうものを提案して,それにチャレンジし,自らリーダーシップをとるということを今までやってこなかったように思います。これは造船だけではなくて,日本全体の体質かもしれません。世の中の環境の変化に伴って,きょう小山先生のお話にもありましたように,SBTだとかダブルハルとかポートステートコントロール,ISMコード,さらに今はバルカーセーフティー,色んな安全,公害防止に関するコンセプトが出されておりますけれども,日本からの提案はほとんどゼロでありました。コンセプトはあくまでも西欧から出てきて,それを我々が解決していくと言う姿勢が問題だと思います。幸い,運技審,その他で指導的な役割を果たしておられる小山先生のご指導もありまして,先進安全船について,きょうの小山先生のお話が中でも極めて明快なコンセプトの御提案が具体的にされております。このように新しいコンセプトを提案して,そしてみずからが解決をしていくということが日本造船業の役割であり,学会や業界の活性化に繋がるのではないかと思います。
第二のお願いです。これは先ほどからも出ておりますけれども,地球は21世紀には100億の人間を抱えて,食糧とエネルギーを多量に消費します。環境に大きな問題を抱えることは間違いありません。地球につきましてはわからないことばかりだと先生方はおっしゃいます。しかし,とにかく海洋は地球の変化を吸収する。また,変化のセンサーとして極めて重要な役割を持つということは間違いないと思います。
地球を守るためには膨大な地球規模の研究観測が必要でありまして,既に国連とか政府間の協定でやられておりますが,一企業ができる問題ではございません。きょうのお話で小寺山先生からもいろいろと述べられましたけれども,サイエンスのレベルで海洋を解明して行くに当たりましては,色んなテクノロジーの支援が必要であると思います。最後に小寺山先生から出てきたのもそういう問題提起だと思います。
我々は船の40%〜50%を占める需要で食ってまいりました。船即ち海洋で食っている産業の責任として,やはり海を守る。地球を守る。そういうことに対しては積極的に貢献をしていく必要があるのではないか。あれはサイエンスの問題だということではすまされない。このように沢山船をつくっている産業の中に海洋関連の技術が結構隠されているのではないか。我々こそが提案して,そして海洋の専門家と一緒になって海洋を守ることに貢献しなければならない。需要と金は今のところ見えておりませんけれども,これは後からついてくるのではないか。ちょっと無責任だと経営者の方に言われそうですけれど,私はそう思っております。
時間が長くなりました。いろいろと申し上げましたけれども,日本造船業が今後も未来に向かって革新的な提案をして,チャレンジする。そういう姿勢を示すことによって,若い,やる気のある人も造船業に集まってくるのではないか。先程どなたかもおっしゃった