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ように,企業は結局最後は人であります。そういう意味でない人が喜んで集まってチャレンジする。結果として,事業として,次の100年に向けて発展を続ける造船業であって欲しい。そういうことを祈念してこのシンポジウムの締めと致したいと思います。

いろいろありがとうございました。

○大 坪  最後に4人の講師の先生方,それから今総括をしていただきました宮崎さんに対して拍手をお願いしたいと思います。

どうもありがとうございました。(拍手)

会場の皆様方にもご協力に対して深く感謝いたします。皆様,どうも長い問ありがとうございました。(拍手)

 

紙上討論

シンポジウムの後,お申し出のあった討論を紙上討論として掲載します。

 

○松 村(運輸省) 技術開発の方向付けの中で,ご検討頂けたらと思いまして,一点話させて頂きます。小山教授は,絶対的な技術開発の重要性は「より使いやすい,より信頼のおける」の方向へ大きく変化して来ているという認識が必要であると主張されておられますが,大賛成で,具体的には,現在の小生の業務に関連してですが,長崎は全国でも有数な離島旅客航路のある地域であり,荒天時の欠航率が高いこと,可能な限りの荒天対応のため,乗船人数の割には大型の船舶を就航せざるを得ず,運航採算性が悪い等,問題があり,荒天時も揺れの少ない快適な通常運航が可能な船舶の開発をお願いできたらと思います。

○角(横浜国大) 星野氏の発言にもあるように,新形式船舶,先進安全船等に関する新しい具体的コンセプトの創出には,造船業,海運業,広く物流関係企業・機関,および監督機関の相互のコミュニケーションを活発化することが重要である。これによって造船技術が対応すべきニーズが明確になる。上記関係者間の情報共有の仕組と効率的コミュニケーションが必要であるのは論を待たない。

一方,背反する事柄のようでもあるが,造船業,海運業が一企業としてあるいは日本としての技術的優位,経済的優位を確保するためには,一定の情報占有の仕組が必要だとの認識もある。公的監督機関は技術情報をもとに安全基準等を制定する使命があるが,社会の趨勢として行政には情報の公開を含む透明性が強く求められている。また大学にはその使命として情報の抽象化・体系化を行い,広く後進の育成を行う責務がある。大学を含む公的機関による研究成果は公開が原則である。

山本氏の発言にもあるように現在,海事技術のためのCOEが行政サイドで構想されているようであるが,上記のような背景を踏まえると,その重要なテーマの一つとして関係機関(造船業,海運業,物流関係機関,公的監督機関,大学)の間の技術情報の共有,占有,公開,抽象化,体系化に関する全体像を構想し,対応する効率的情報管理を可能とするシステムを構築することが今求められている。特に,個船情報に関する造船と海運の間の情報共有と情報占有の仕分けに関する情報管理の問題と,個船情報を抽象化・体系化し,公的機関や大学が一般情報として社会に公開するためのシステム構築が重要ではないか。

○大 和(東大) 先進国型技術経営的視点の涵養:我が国造船界は長く世界をリードしてきたが,世界的な経済拡大の中で自国産業の拡大がその中心テーマであった。今後は従来のような経済成長はなく,現状システムの質的向上や環境問題など従来産業として取り上げにくかった重要問題への対応が必要であり,まず海上交通輸送の安全・効率化,環境問題への対応等を中心に展開を試みるべきであろう。しかるに,実はこのような問題は,現在までの日本の工学体系の中で欠落している技術経営の部分と思われる。一般にシステムを導入する際には,それにより社会が受ける便益と対価,企業の採算との関係で成否を検討する。先進的に安全な船舶を供給運航するのには設計からメインテナンスまで含めてどのような技術を要するか,基盤たる情報技術で何を行うか,安全に関する世界的な合意を得るにはどうすべきか,将来像を描いた上でこのような経営論的な議論が必要である。環境問題について何ができるかについてもシステム像を描いて検討することが必要である。先進国型の産業は技術経営的観点を持つべきであろう。

また,現在の教育現場はこのような人材の供給に必ずしも最適ではない。造船を更に発展させるには従来の内容に新たな観点をふくむ工学教育が要請され,東京大学でも新たな理想とその着眼を明瞭にするシステムへの移行を具体的に検討中である。

 

 

 

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