と思うわけです。つまり,会社の持っているノウハウを,一口で言うとコンピューターの中に押し込んで,現場に出ていった若い技術者がそれを容易に引き出せるようなシステムを作る。そして,現場から返ってきた技術的なニーズで,自社の技術レベルを上げるということで,そのシステム自身をまた改良していく。そういう努力をしないと,なかなか海洋にはアプライできないかなというふうに思っています。これは一つの事例です。
○小 山 全く同じことが船にも言えるわけです。今,一番指摘されているのは,商談に出かけるときに15人ぐらいぞろぞろ出ていって,1人で話ができないのかという話があるわけです。基本的な問題だと思います。1人で話ができるというのが本来の造船屋の姿だと思います。分業化が進み過ぎて,セグメントされている。
海洋の人たちはインターディンプリナリーな協力が必要だ。個人のホロエズムというのでしょうか,全体的な視点が必要だということを言いながら,前田さんが矛盾していると思うのは,エンジニアリングとマネジメントの間に何か境を置きたがるような発言だった。要するにやりたいと思うことを最後までやり遂げる。そういう習慣を身につける。言うのは簡単ですけれど,それをどうやるかという話だと思います。
大坪先生がこのディスカッションの最初に技術予測は難しいということをおっしゃったのですが,実はちっとも難しくないのです。基本的な認識の違いで,大坪先生が言われるような意味での「技術がどうなる」というのは神様しか知らないわけですね。人間の思いによって技術の方向なんてどうでも変わるわけです。ですから,漠然とどうなるだろうというのがある種の技術予測で,それは科学技術庁が5年置きにやっています。デルファイ法でも何でもやればいいのです。もう一つの,我々がやるべき技術予測というのは,予測というよりは,「こうやりたいのだと,それができるだろうかと。できないとすればどこを崩していけばいいのか」。こういう立場で考えるのが普通の意味の技術予測なのですね。予測という言葉と少し合わないかもしれませんけれど,本来そういう行動のことを技術予測といっているわけです。
そういった意味から言うと,最初何を思いつくかというのが問題ですね。だけど,それから後の方法論というのは非常に簡単なわけです。思いさえ強ければいいわけです。
○大 坪 どうもありがとうございました。
今ずっとディスカッションしているのは,目標とすべきイメージを何とかしてつくり出したいという思いでやっています。目的はそういうことでパネルディスカッションを進めさせていただいておりました。
木岡さんの今後の研究体制,研究をどういうふうにやっていくかということに関しての御質問に対して山本局長の方から一言お願いできればと思います。
今後の研究体制
○山 本 私どものつくりましたレジュメで谷野さんに話をしてもらいました最後のところですが,COE,中核的研究拠点を作れという話が皆さんを中心とした集まりであります海運造船合理化審議会からも出ております。私どもはできるだけ早い機会に皆さん全体の共通の,日本造船研究協会よりはるかに資金力を豊かにし,はるかに体制を強力にしたものを,何か作るべきと思い,鋭意模索中というところでございます。
そこで,単なる技術予測や技術のプロジェクトの旗振りをするのみならず,輸送システム全体を考えた中で,そのシステムのあり方,今後の海上輸送需要全体,その中でのハードのあり方,ソフトとの組み合わせのあり方,こういったようなものをテーマにして研究するのも大きなテーマになるべきでありましょう。また,船舶の運航や海洋施設の設置などに伴う諸々の社会コスト,社会的費用の発生をどのように経済活動できちんと負担するような形に持っていくべきなのか。それを効果的に実現するための安全規制や安全基準のあり方,そのようなものも研究テーマになってしかるべきだろうと思います。
こういった諸々の問題を固定的な体制というより,必要に応じて各界から人が集まって,知見を総合できるような,しかも資金も投入しやすいような形での研究体制を是非作り上げたいと思っております。私ども鋭意内部的にも努力しているところですが,これはできるだけ早い機会に皆さん全体の議論の対象として頂いて何かやるべきであると考えております。
○大 坪 どうもありがとうございました。時間がなくて,開発すべき技術項目まで話が及びませんでしたが,最後に三菱の特別顧問の宮崎晃さんの方から総括と閉会のあいさつをお願いしたいと思います。
きょうのために将来技術検討委員会というのが期間を延ばしまして,フェーズ2という形でずっと作業を若い人を中心にしてやって頂いてきました。このシンポジウムでは必ずしも十分その成果が反映されており