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コードなどのことをおっしゃって頂いているので,私はそういう議論がなされていないとは全く思っておりません。

○根 本  議論ではなく,本当に現場で実行されているのかということなのです。船主の要望(これは貴重な情報)に対して手がないという理由でことわったり,コストダウンが行き過ぎてグレードダウンに走り,結果としてトラブルを発生して船主の信頼を失った事例をいくつか耳にしております。気に入る船を提供するという場合の船は,何も従来にない新しい型であるとかいうことばかりではありません。ありふれたタンカー,パルクキャリア,これらに船主の希望する船が提供できるかどうかにかかっているのです。需要の大半はそういうありふれた船なのです。今後10年間考えても恐らくその船の大部分はありふれた船でしょう。新しい型の船も出てくるでしょうけれども,これはごく一部にしかすぎないと思います。我々が今論じている10年,そこらの間を見ますと,造船所が生きていくための糧はありふれたタンカーであり,バルクキャリアです。ですから,少なくともこういうものにおいても船主の気に入る船を造ることを最優先事項とするのでなければ生きていけないというのが私の主張なのです。

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○尾 花(元運輸省) 一つお聞きしたいのは,新しい技術によってどんな声を船は出しているのか。その船の泣き声を聞きたかったのです。言葉をつくる。きのうたまたま曽野綾子さんはレシプロエンジンに乗って,そして煙が前の方に。非常に感覚的に,感性的にものをとらえていますね。私が聞きたいのは,新しい技術のもとで,船がどういう言葉を,新しい言葉で語り始めているのか。センサーができたし,コンピューターができた。そしたら,それを言葉で表現できないか。たまたまきょうのお話の中で一つあったなと思うのは,小山先生の話で,平均故障時間間隔ということが出てきますが,こういうふうな特別なものがだんだん出てくるのではないか。そして,それを出すことによって日本の技術は優秀だということの裏づけを,もっと素人にわかるように何か広報できないだろうか。

それからもう一つ。自動車について思いますのは,マスキー法,あれができたために物すごく日本の自動車が進みました。今後は新しい技術の中で世界に対して何かカイト(凧)を挙げるべきだと思うのです。そういうことを考えながら目標を,そして日本の技術の優秀性,先進性を示していく方法もあるのではないでしょうか。きょうの話の中でセンサーやコンピューターとかナビゲーションレコーダー等々の話は全く出てきませんけれど,そういうものの導入によって技術の優位性はできないのでしょうか。

○大 坪  そうですね,時間が限られていますので,先ほどのニューコンセプト,日本で生み出すようにするにはどうしたらいいかという話は,結論はもちろんここでは出るはずもないのですけれど,それを飛ばしまして,技術の高さを志向するためのインセンティブ,それを小山先生,保険と,もう一つ何でしたっけ。

○小 山  クラス。船級。技術ではなくて安全です。非常に限定的な意味で言っているのです。

○大 坪  つまり安全がお金になる。インセティブが与えられるということだと思うのですが,そういう方向で山本局長の方から今後IMOの場も含めて安全性というものに対して技術の高い造船所がある程度有利になっていくような仕組みのことで,もし御意見ございましたら。

 

安全性の問題

 

○山 本  大変難しい話でございますが,ご承知のとおり,世界の海運の中で保険という概念は,まさに海運の概念の中で一番先に発達してきたものでございました。保険というのは,ある一定の割合で想定されるリスクをお互いに埋めようということに発端があるわけでしょうが,つまり荷物を持って帰ってくる事が高い船と,荷物がなくなる確率の高そうなボロ船とでは料率が違ってしかるべきだということで,保険料の違いが出てきたものです。それで,優秀かつ安全な船の方が相対的に保険料が安くなり,これには船体にかかる保険と積み荷に掛けられる保険がありますから,その保険の差額によって生じる価値,価格の差は大きなものがあります。それによって新技術の優秀さがカバーできる場合には保険によって当然カバーされていて,インセンティブが働くということだと思います。もう一つは,保険屋さんはそう言う一方で,新しい技術であっても実績が上がって,現実にロスレシオが低いという姿があらわれてこないと割り引かないという,後追いでしか割り引かないというところでありますので,そこの最初のリスクをだれが負担するのかということで,新技術がなかなか普及しなかったり,

 

 

 

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