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はこれに関する科学をこの200年間にあまり発展させてきませんでした。現在でも取扱説明書というものがあって,例えば音楽を聴くCDプレーヤーの取扱説明書を見ると手順が絵で説明してあります。まずホールドを解除する・そうすると演奏が始まる。音量を調整するというように,これで確かに取り扱うことができます。プロセスを表現する方法はこのように存在はしてもあまり科学的でなく,ディドロのやったことと同じで枚数を重ねていけばシークエンスは説明できる。では全く同じかというとそうではなく,絵が下手になりました。ディドロの方が断然上手で,むしろ退歩している。ここにもの造りを科学にしなければならない一つの要因があるわけです。もの造りは,造られる対象についての知識は高度に体系化したが,造るという行為については依然としてこの200年間科学的な進歩はなかったのです。

 

5 新しい概念の創出

 

それでは,ミッシングリンクであるところの横断的な一般設計学は果たしてできるのか・できるとすれば一体それはどういうことなのか。製造という分野は手を動かして造るわけですが,設計する場面だけを考えると,それは概念を操作していくことです。すなわち新しい概念を作ることに他なりません。ここでその対象は自然存在のものしか使えない,つまり素材は自然に存在しているものを使うのが基本です。問題は,設計が今までになかった概念を作ることであるならば,概念を作るのは一体どういうプロセスなのかという点にあります。そこまで抽象化して考えると,それは造船学であっても計算機学であっても同じものになっていくのではないかという期待感が持てます。

今,一つの新しい概念を作り出す例を図2を使って考えます。まず一般に我々が概念形を作るときに

 

 

 

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