(建造ドック)で建造できる隻数が増加し大量建造が可能になったわけです。
c) 工費/コストの変遷
生産性向上の努力のお蔭で,工費とコストの比は急激な賃金の上昇にも拘わらず,23%〜20%とほぼ一定を保っています(図56参照)。上記のような目覚ましい生産性向上の努力が無かったら,日本はとうに造船国から脱落していたことでしよう。
2) 設計技術の革新
戦後の我が国の造船業の急速な発展は上述のような建造技術の発展に負う所が大きく,短納期,高信頼性,及び超大型タンカーの建造技術により世界の需要を独占してきたわけですが,それと共にそれを可能にした設計技術の革新も見逃すことはできません。ここでは,それらの例として球状船首(バルバスバウ)と大型タンカーの構造方式の変革について述べてみます。
i) 船型開発と設計技術
船型の開発は所要馬力の低減として直接船の経済性に寄与するため,極めて重要な事項で,W. Froude以降幾多の実験的および理論的な研究が進められてきましたが,ここでは造波抵抗理論の実際的な応用例として,乾崇夫教授(当時,後に東大名誉教授,日本学士院会員)が理論的に考案した球状船首(バルバスバウ)について述べてみたいと思います。それまでも船首に膨らみを付けると抵抗がある程度減ることが経験的に知られていて,理由もよく判らないままバルバスバウと称して散発的に使われていました。乾教授は昭和35年頃に球(二重吹出し)の造る波と,船体(基本的には吹出し)の造る波の位相が逆であることに着目して,船首に球状の物体をつけることにより,主船体の造る波を打ち消すことができることを理論的に証明するとともに,最も効果的な球状船首の設計手法を確立しました。この理論は図31のように模型実験により実証された後,関西汽船のくれない丸に装着され