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記念講演

我が国造船百年の歩み

元日本造船学会会長

東京大学名誉教授  元良誠三

 

緒言

本日は,我が国造船百年の歩みということで講演をする事になりましたが,時間も限られていることでもあり,とても詳しい話はできないと思いますので,ここでは日本の造船業の100年間の推移のごくあらましをお話しし,その間の幾つかのトピックスを取り上げてみたいと思います。なお,時間の関係で当然紹介すべき個人あるいは企業の業績に言及出来ないことも多々あると思いますがご容赦くださるようお願いします。

造船学会の前身である造船協会が設立された1897年,即ち明治30年は,明治27,28年の日清戦争が終わった直後で,造船,海運の発展の機運にありました。

造船協会はこの機運に際して造船技術と造船事業の発展,改良,隆盛を図る目的で創立された事が設立総会で発起人代表から報告されています。

 

1 明治時代の造船業

 

明治時代は長らく鎖国状態にあった我が国が西欧諸国に伍して生きていくために,懸命に近代化を目指していた時代でありました。その当時の海運及び造船は現代の機械産業,電機産業,航空産業,通信産業の一部をも包括した社会の基盤産業であり,今とは比較にならないほどの重要性を持っていました。明治政府はその育成のために,まず外国からの技術導入から始め,次いで国産に移行する方策を採っています。造船の技術移転は,幕末にオランダが長崎の海軍伝習所を指導したのに始まり,次いで慶応元年(1865年)に日仏技術援助契約が成立して,1877年までフランス技術団が来日指導し,1978年以降は主としてイギリスからの技術移転が行われています。造船業は数多くの産業の基盤の上に成り立っており,造船業の育成はまた同時に多くの関連工業の育成にもつながっていた

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