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記念講演

造船学会百周年記念講演として下記の3つの講演が1997年5月13日に実施された。

1. 我が国造船百年の歩み        講演者:元良誠三(元日本造船学会会長)

2. もの造りの科学           講演者:吉川弘之(前東京大学総長)

3. 海洋科学から海洋工学への期待    講演者:平 啓介(日本海洋学会会長)

講演の企画は百周年記念事業実行委員会の中に講演ワーキンググループがつくられ,そこで検討された。講演案が最終的に決まるまで長い過程があったが,ここで記す内容ではない。

百周年記念として第1の講演は,無くてはならないものであることは議論の余地はない。元良先生はこの講演の準備に資料集めをはじめとして非常に精力と時間を注がれ,それを垣間見ていた講演ワーキンググループとしてまさに心血を注がれていたとの印象を持っており,深く感謝の意を表する次第である。それにしても元良先生から語られる近代造船の立ち上げの速さには驚嘆する。

第2の講演は,工学者の中で数少ない哲学を語れる代表者として吉川先生に工学は科学か?を語っていただいた。もの造りとは,仮説をたて,物を造り,それが受け入れられるかどうかの選択を経てその正当性が保証されると言う意味で,選択科学と呼ばれるべき科学である。これは実験によってその仮説の正当性が保証される従来の科学を意味する実験科学,歴史的資料によってその正当性が保証される歴史科学に次ぐ第3の科学であるという主張である。

第3の講演は,今後,造船学会が来世紀における大事な柱とすべき海洋工学の進むべき指針を得るべきものとして,海洋観測を専門とされる平先生から,その実態と海洋工学に期待されることを語っていただいた。

ここに講演内容が再掲されるが,先輩が果たされてきた偉業をもう一度振り返り,また造船業をとりまく環境にも思いをいたらす材料となることを期待したい。

 

講演者の略歴を記す。

元良誠三先生

1944年9月  東京帝国大学第二工学部船舶工学科卒業

1960年8月  東京帝国大学工学博士

1963年6月  東京大学教授

1981年5月〜 日本造船学会会長

1983年5月

1982年4月〜 長崎総合科学大学学長

1989年3月

1985年11月  財団法人シップ・アンド・オーシャン財団理事

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吉川弘之先生

1956年    東京大学工学部卒業

1978年    東京大学工学部教授

1989〜90年  工学部部長

1993年4月  第25代東京大学総長に就任

1997年3月  東京大学総長退任

1997年4月  文部省学術顧問

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平 啓介先生

1965年3月  東京大学理学部物理学科卒業

1967年3月  東京大学夫学院理学系研究科修士課程卒業

1987年12月  東京大学教授(海洋研究所)

1995年4月  日本海洋学会会長

1997年4月  東京大学海洋研究所長

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