? 関係法規
船舶に関する法律としては、船舶法、船舶のトン数の測度に関する法律、造船法、漁船法などの行政的法規と、船舶安全法、海上衝突予防法、海上交通安全法、港則法などの航行安全に対する技術法規とがある。膨脹式救命いかだの整備技術者に必要なのは後者の方であり、船舶安全法は船の構造、設備の面からの安全取締法規であるのに対し、海上衝突予防法、海上交通安全法、港則法は船の運航上の安全取締法規である。特に整備業務に密接な関係があるのは船舶安全法である。
1. 船舶安全法とSOLAS条約
1912年4月14日米国へ向け処女航海中の英国の豪華客船タイタニック号(46328総トン)が北大西洋のニューファウンド島の沖で氷山に衝突して沈没し、乗客等2208人中1503人の犠牲者を出した海難事故を契機として、船体構造、救命設備、信号方式等について船舶の安全基準の国際的統一を図る気運が生じ、1914年に「海上における人命の安全のための国際条約(SOLAS条約と称す)」が締結された。その後第1次世界大戦の動乱期を経て、1929年に第1次の条約改正が行われ、わが国も船舶の安全取締りに関する法規を統一するため、1933年(昭和8年)3月に現行「船舶安全法」が制定公布された。現在の船舶救命設備規則は、1948年に引続き、1960年の第3次改正SOLASに基づいて定められたものであるが昭和55年5月に60年条約に代わる条約として1974年SOLAS条約が発効したことにともない国内法規も一部改正が行われた。さらに昭和61年7月、1974年SOLAS条約の1983年改正により救命設備規則が大幅に改正された。
IMO決議A.761(18)(1998年11月4日採択)の主要な整備部分の概要(仮訳)は次のとおりである。
(1) GIテスト(ガス膨脹試験 Cas Inflation Test)は5年毎の間隔で実施され、ガス膨脹テストを行う場合はとくに安全弁の効力に注意をしなければならない。
(2) 全ての救命いかだは外観検査の結果必要でないと認められた場合を除いて製造後10年経過後、毎年次頁に記載されたNAPテスト(必要追加圧力テストNecessary Additional Pressure Test)を受けなければならない。使用圧力の繊維張力を得るために十分の間隔をおいた後、救命いかだは1時間以上の圧力テストを受けなければならない。この間の圧力低下は使用圧力の5%以下でなければならない。
(3) GIテスト又はNAPテストが要求されない場合は、救命いかだをコンテナ又は格納箱から取り出し、保持索があればそれを取りはずし、乾燥した圧縮空気により救命いかだを膨脹させ、少なくとも使用圧力又は製造者の整備規程で定める圧力が高い場合はその圧力で使用圧力テスト(WPテスト、Working Pressure Test)を実施しなければならない。
(4) 床気室と浮力室の縫い目のずれ及び端部の持ち上がりをチェックしなければならない。
(5) 縫い目が支持されないような装置により整備場の床から適当な高さに浮力室を支え、75kg以上の体重の人間が床気室の周囲を一回り歩行又は這って回り、縫い目を再度チェックしなければならない。