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ゴム布の折目の両面のゴム膜部分には伸縮力が内部歪として蓄積され、船体の振動は外力として布に作用する。またドライアイスの低温はゴム膜に急激な収縮を起させるので弾性限界を越え亀裂を生ずるに至る。これをゴムの低温脆化という。

昭和45年、46年に当協会が行なった「気室布の耐用年限の判定方法に関する研究」では、年次の攻撃でゴム膜がいかに損傷されたかを実績に基づき確率解析を行ったが、製造後約4年半で初期ゴム膜の耐力が外力の攻撃に負け始め、その後は急速に状態が悪化し、製造後8年までは辛うじて信頼の可能性が残るものの約11年後には平均的に廃品状態になることが判った。また昭和56年の「経年劣化に関する調査研究」では、製造後8〜12年を経過した使用中のいかだを調査した結果、経年8〜12年で接合部を含めた強度低下が著しく、その性能要件を満足できないものがあることが判明し、従来の統計的な手法で行った調査結果の妥当性を、別の見地から裏付けられている。

酸素やオゾンの攻撃は空気の存在する限り避けられず、ゴム膜内部まで侵入し、目に見えないものから目に見えるものまで無数の亀裂発生という損傷を与える。これは昼夜を問わず、気温の高低にかかわらず進行し、鉄の錆が目視できるのに対し、ゴムの損傷は膜の内部に発生し直視できないため人がその進行に気付かず、誠に危険である。

人命を託する際かだの使命上、悪くなったから取換えるのではなく、悪くなる以前に新換すべきで、信頼性が低下している時点で敢て修理をし、外見上の試験結果のみで延命を図ることは慎しむべきである。

(4) ゴム接着剤

パッチ貼り修理の難易はパッチ面積の大小よりは、老化の進行程度如何が重要である。前項(3)で述べた老化がどの程度ゴム膜の表面及び内部に進行しているかを考慮してパッチ貼りをしなければならない。老化の進行程度に応じ、接着の前処理、パッチの範囲は当然変るべきである。わが国ではS.Sは小修理に限定されているので、画一的な補修方法だけしか教育されていないが、外国では高度の修理まで出来るS.S又は整備技術者を特別に教育して、S.Sの格付けをしているところがある。

 

 

 

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