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計画もある。東京区部下水処理量430万m3/日のリンと窒素化合物処理施設費用に6,800億円、リンと窒素化合物維持管理費として1.7〜2.5億円/日と試算している。人口の増加と都市化で生活排水が増える事により、先進国はもとより発展途上国においても、これから水資源の保護をする上からも、生活排水中のリンや窒素化合物の排出を極力少なくするよう努力しなければならない。

 

3) 農薬(agaricultural chemical)による水の汚染

農業生産量を上げるために農薬は欠かせない。しかし農薬の中には発がん性や長期慢性毒性のあるものがあった。DDTはその代表で、環境中で分解されず、蓄積性があり、動物に対して発がんの可能性も報告されている。日本では1971年以降使用されていないが、未だに環境中から検出される。

一方、ゴルフ場の芝生の管理に除草剤(herbicide)、殺虫剤(insecticide)、殺菌剤(sterilization agent)が多量に散布されている。田畑に用いるものと同じで約40種類ある。田畑やゴルフ場に散布された農薬はやがて河川や湖沼、地下水を汚染する事になる。特に、殺虫剤である有機リン剤(organic phosphorus pesticide)は、生体内のコリンエステラーゼ(cholinesterase)という酵素の働きを阻害し、神経毒(neurotoxin)として作用するが、飲料水の消毒に用いる塩素のために毒性が100〜1,000倍に増強されると言われる。その使用に当たっては制限が必要である。

 

4) 塩素消毒による水質汚染

1972年にオランダでライン川下流の水からクロロホルム(chloroform)が検出されたのがきっかけとなった。1974年にアメリカのミシシッピー川の水を飲料水としていたニューオリンズ住民の発がん率が、他の水源を飲料水としていた人々よりも高いというHarrisらの報告で、河川中の発がん物質が問題となった。

本来、塩素消毒は飲料水中に存在する有害微生物を殺菌(disinfection)し、安全な水を提供するのが目的である。しかし近年、原水の有機物による汚染が進む事により、浄水処理(water treatment)に要する塩素注入量を増やさざるを得ない状況にある。

塩素が原水中のフミン質(humin)やカビ臭(moldy)原因物質などの微量有機物と

 

 

 

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