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(4) PCBによる水の汚染

カネミ油症事件(Kanemi rice oil food Poisoning)の原因物質として知られるPCBは、塗料、印刷インキ等の溶剤として、トランスやコンデンサーの絶縁油(insulation oil)として、また、熱媒体(thermal medium)として用いられていた。PCBは肝臓障害、色素沈着(pigmentation)などの生体影響を生ずる物質であるが、難分解性、高蓄積性があり環境中にいつまでも安定した状態で存在する。そのため、産業界で使用されたPCBは河川や湖沼、海を汚染し水生生物(aquatic organism)の食物連鎖で濃縮を受け、生体内に入るため人体や母乳からも検出されている。日本では1972年以降製造禁止されているが、未だに環境中から検出される。

 

(5) ダイオキシンによる水の汚染

地球上で最強の毒性を持つと言われるダイオキシン(Dioxin)が海の底泥や魚から検出されている。Dioxinは除草剤(weedicide)合成過程で不純物として産生されたが、環境中で安定、難分解で、生体への蓄積性が高く、生体内の肝臓や脂肪中に長期間残留し、微量で発がん性(carcinogenicity)や催奇形性(teratogenicity)を持つ物質である。製紙工場のパルプの漂白工程で生成される事が明かであるが、最近、清掃工場(scavenger facility)、事業所や一般家庭の焼却炉(incinerator)からの発生が問題となっている。

500〜600℃でプラスチックや塩化ビニール製品(vinyl chloride products)を焼却するとダイオキシンが発生し、煙や灰の中にでてくる事が明かである。大気中に出たダイオキシンは、乳肉製品、海産魚類、野菜等の食品を汚染するだけでなく、地下水を汚染し飲料水として生体内に取り込まれる。この事実は世界的な問題となっており、すでに規制している国もある。リサイクルにより焼却物質を減らすか、焼却温度を850℃以上にするかで、環境中のダイオキシン量を低減する事は可能である。

 

 

 

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