を起こしたものである。1956年に最初の患者が報告されたが、特に脳神経系(cerebro-nerve system)への障害が著明であった。
1975年にはカナダのオンタリオ州で原住民のインディアンに水俣病が発生している。上流の化学工場とパルプ工場の水銀廃液によるものであった。イタイイタイ病(Itai‐itai disease)もカドミウム(cadmiumu)の汚染によるものである。富山県の神通川上流(upper stream of Jintsu river)の工場からの廃水中のカドミウムが生物濃縮(bioconcentration)を受けて人体にとりこまれて起こった被害である。
船底塗料や漁網防汚剤として使用される有機錫化合物(organo tin compound)による湖沼や海の汚染が問題となっている。大型タンカーの船底に付着する甲殻類(Crastacea)が船のスピードを落とし燃料消費量増加をもたらしたり、定置網や養殖場の漁網に付着する藻類(seaweeds)により酸素欠乏(oxygen deficiency)となるためこの化合物を塗布していた。当然これらの化学物質による魚介類の汚染、生物濃縮により最終生物である人への健康影響が懸念された。有機錫化合物は難分解性(difficulty of degradability)、高蓄積性(high accumulation)、慢性毒性(chronic toxicity)がある事から、今日日本での使用に関しては厳しく使用制限が科せられている。しかし、今後世界的な規模での規制が必要とされる。
(3) 多環芳香族炭化水素
石油や石炭の不完全燃焼、自動車の排気ガス中に多量に含まれる物質に多環芳香族炭化水素(polycyclic aromatic hydrocarbon:PAH)がある。石炭からとれるコールタールにも多量に含まれるが、水道管の内面塗装に使用されると飲料水中に検出される。大気中浮遊粒子状物質(air borne particulates)(大気汚染物質(air pollutants))中には多種多様のPAHが検出される。これらPAHはやがて地上に落下したり、雨水と共に水道源水や地下水に溶け込み、やがて飲料水中に出現するか、塩素処理により変異原物質やトリハロメタン(trihalomethane)となる。