日本財団 図書館


足と水質の悪化を招くことになる。さらに人口の増加と都市化は水の需要を増大し、農業用水の一部をも都市へ奪われる結果を招いている。

人口の増加は当然食糧の必要量の増大をもたらすことになるから、農業への水の供給が必要となる。世界全体で農業が必要とする水は河川、湖、帯水層からの水の65%、産業用水に25%、家庭・都市用水に10%を用いているといわれる。

食料生産に必要な水を十分に得ようとすれば、河川流量の減少、地下水面の低下を来たし、都市の需要を十分まかなえなくなる。都市の水量を確保しようとすれば食糧生産用水の逼迫を来たす。ここにジレンマが生ずることになる。

一方、世界で15m以上の高さを持つ大型ダムの数は1950年頃で5,000位あったが、1996年には38,000となっている。日本での年間取水量に対するダムヘの依存量は、1970年は19%であったのが、1991年には35%となりダムヘの依存割合が増加している。ダムの建設により河川の水量は完全に管理されて来てはいるが、生態学的機能(ecological function)を守らないことになり、水生環境の衰退が始まっている。すなわち河川デルタの衰退、湖の縮小、湿地の消滅、動植物が絶減寸前となりつつある。こうした環境破壊による人々の生活への影響、ひいては健康への影響を無視することはできない。

また、水の需要が逼迫している地域では海水の淡水化利用を進めつつあり、当初の頃から比較し低コスト化が図られている。今後、供給する水の安全性確保には良好な水質の水源を確保する必要がある。しかし、人口の都市集中化、産業の発展と産業技術の高度化による水道水源(aqueduct water source)の汚染、水質汚濁(water pollution)の多様化が問題となっている。

 

3) 水の衛生的意義

河川や湖沼の水をそのまま飲料水に利用していた時代はともかくとして、都市化、人口の集中化により立地上の水不足を解消し、水利用の容易さから水道が必要とされるにいたった。しかし、初期の頃は飲用に適した安全な水ではなく、濁りを除去する目的で1800年代初め頃より濾過法(filtration method)が用いられた。これは今日では常識となっている細菌の除去が目的ではなかった。1885年にP.Frankland

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION