日本財団 図書館


4) タイの水事情

マレーシアとならんで工業化レベルの高いタイの事情をみることにしよう。タイの最近時点の工業化率は39%で、他のアセアン諸国に比べて大差ないが、90年代に入った近年の変化としてみると必ずしも小さくない。最近時タイ通貨バーツの低下など金融危機で国際的支援を受けるなど、成長の将来性についての危惧もないわけではない。また、マレーシア、インドネシアなどの経済計画指向性に比べると市場経済重視傾向が強いといえなくもない。

こうしたことが、インフラの整備などの面での対応に遅れなしとしないとの指摘にもつながるし、環境変化、交通渋滞が注目されることになっているともいえるのである。タイの水資源面にも共通した事情がないとはいえない。

各国が政府の権威で水需要の調整にそなえるための需要予測などを集中的に行うのに対しタイはエネルギー資源公社の予測にすぎないものがあるのみである。しかも、この中で注目されるのは、用水のうち農業用水のシェアがさらに増加するとみていることである。

産業用水(工業中心とみていいか)のシェアが著しく小さいことである。しかし、タイの工業の現状をみると、企業の自己負担による地下水汲み上げなどでの対応が見逃がされていることなど需要に見合うべき供給が検討されていないとすれば、中長期的需給問題が結果的には成長の制約になるのではないかが危惧されるのである。

国家計画上の位置づけのない資源公社の予測であるから、評価は問題外とするべきであろうが、この予測の補足資料としてある供給能力との見合で生ずる不足率が93年3.5%2006年7.1%と拡大している。需要の伸び率は、タイの現在の経済の状況からみて必ずしも過大とはいえないようであるから、能力の不足とみるのが妥当しよう。環境保護需要が不変ながら、かなり大きなウエイトを占めているものも理解が難しい。

 

5) インドネシアの水事情

アセアン諸国の中では工業化ではフィリピンと並んで後発であったインドネシア

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION