3) マーレシアの水事情
つぎに韓国についで工業化が進展しているマレーシアの水事情をみることにしよう。マレーシアは1970年代以降7%をこえる経済成長率、とくに90年代は平均8%をこえる高度成長を遂げてきたが、近年93年の製造業の対GNP比率は44%と著しい工業化の実績をあげている。また、その製造業の内訳をみると、近隣諸国が食料品加工、繊維加工など低位技術の分野のシェアが高いのに対し、機械工業、とりわけ電子工業など先端分野のウエイトが高いという特徴をもっている。これは、外資との提携を積極化する方針によるところ大であったといえる。
累次のマレーシアプラン(5ヵ年計画)で意欲的に経済発展を遂げてきたのであるが、最近の第7次計画では水供給に関しては90〜95年の増加率20%を前提にした上で、2000年までの増加率18%を見込んでいる。用水の目的別にした資料はないが、都市、農村別にしていることから、工業用水と生活用水の合計が、ほぼ都市需要とみていいであろう。都市の伸び率は90〜95年22%、95〜2000年21%で、いずれも、農村部の伸び率を大きく上回り、工業化による用水需要の変化は明らかである。
マレーシアは既に10年前に終わっている第5次計画で、降雨量の56%を有効化するとして、多目的ダム建設と州際給水システムの整備を掲げており、80年代前半からダム建設を積極化してきた。当時のダム建設には給水対策、農業用潅漑などを主目的とするものも多くみられたが、90年代に入ると都市への給水(生活用水と工業用水)を主目的とするダム建設のプロジクトが増加してきており、90年までの10年間に供給水量40%増、また86〜90年の供給プログラムでは94%を都市部としており、都市化テンポも大きいことと相俟って工業化の影響を明らかにしている。
マレーシアは連邦制をとっていることもあって、州際の水供給調整などには慎重で、既に1982年に全国水資源研究で煉りあげたマスタープランの中で掲げたガイドラインにもとづいて、ゾーニングプランの整備、水資源の管理のデータベースの管理、効率改善等を進める方針を明らかにしている。また、このための法制、制度、資金運用などの水資源に関する組織的対応を進める方針を第7次計画で強調している。水資源のもつ広域性への政策的対応というべきものである。