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常に緻密な層位を形成し、上部には粗い土性の薄い表土が残される。この様に土壌の物理性が完全に破壊されるために、透水性が低下し、土壌からの排水を妨げる。さらに土壌硬度は上昇し、植物根の貫入を阻止するとともに、通気性も損なわれ、局所的な還元状態による有害な還元性化合物の生成をもたらす。

塩類-ナトリウム土壌(Saline-sodic soil)は塩類土壌と同様に高濃度可溶性塩類(EC>4dS/m)が特徴であるが、交換性ナトリウム割合(ESP15%)が高い点で塩類土壌とは異なり、塩類およびナトリウム土壌の両者の性質を合わせ持った問題土壌である。この土壌ではナトリウム以外の可溶性塩類が多量に存在する限り、ナトリウム土壌のような高分散性に出来する困難な問題は生じない。もし、可溶性塩類が下方に洗脱されると、PHは8.5以上を示しナトリウム土壌と同様な問題が生じる。また、可溶性塩類上方に移動するとコロイドに吸着されたナトリウムはカルシウムと交換され、土壌pHは8.5以下に低下し塩類土壌と同様な問題が顕在化する。

 

3) 塩害土壌の分布と改良

パキスタンにおける塩害土壌の分布は各種研究機関により調査が実施されているため、調査時期、方法および分類基準が異なるためその面積はかなりの食い違いがある。ここではThe soil survey Pakistan reportに基づき推定した結果を表1に示した。

調査された634万haの中で約105万haは何だかの塩害を受けた土壌が存在し、さらにこの中で55万haは塩類-ナトリウム土壌である。また、25万haの塩害土壌は塩類濃度の高い地下水の潅漑により引き起こされたものである。

塩害はインダス平野に顕著に認められ、この地域の地形学的な特徴ばかりでなく、数千年にわたる潅漑農業が引き起こした人的災害でもある。

塩害土壌の改良には塩類の洗脱による根圏域からの塩類の除去が最大の課題である。すべての改良方法に共通する事は、その原因となった地下水位を低下させるとともに、排水路を確保することである。地下水位が低下しない限り、如何なる改良方法を用いても、塩害の再発は避けられない。

 

 

 

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