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義される。湛水と定義される地下水位はその作物により異なるが、マンゴのような果樹を除き、地下水位が1.5mで減収が認められ、さらに1〜0.75mで25%程度の減収をもたらす。

湛水により引き起こされる土壌、作物への影響は、植物根圏の還元化と酸素の減少、土壌風化により放出された塩基類による土壌の塩類化、さらに作物の倒伏および病害虫の増加が挙げられる。

湛水地域の改良には地下水位を低下させることが最良の策であり、現在までに行われてきたSCARPによる排水も一部地域では有効であるものの、排水路の確保と土壌物理性および地域特性に適応した明きょ、あるいはもぐら暗きょ、弾丸暗きょ等の設備が必要不可欠であろう。これは地下水位の低下だけでなく、塩害の軽減にも極めて重要である。

一方、湛水の原因である潅漑水路からの漏水の防止も極めて重要であり、これには水路のライエングが有効である。

土壌塩害はこの国で最も重大な問題のひとつであり、試算によれば、耕作可能地の約120万ha以上の土地は何だかの塩類障害を受け、作物生産の制限因子とならている。また、年間4700万$の経済的な損失をパキスタン経済に及ぼしていると推定されている7)。塩害が水稲栽培以外の作物収量に及ぼす影響は、部分的な塩害地域では20%、強度の塩害地域では60%の減収が認められる。

この種の問題土壌は乾燥〜半乾燥地域の排水不良な状態下で発達する。特にこの国の土壌母材は未熟な海成堆積物を主体とする沖積土壊であるためにNa+、Ca2+,Mg2+,K+,CI-,SO42-,HCO3-,CO32-等が主要構成イオンである。乾燥気候による強い風化作用は土壌溶液中の可溶性塩類濃度の増加を招く。また、各種可溶性塩類を含む地下水を潅漑用水として用いることも可溶性塩類濃度を増加させる原因となる。これら可溶性塩類の濃縮、集積が植物生育を制限する要因となる。

この種の問題土壌は塩類土壌、ナトリウム土壌およびそれらの複合した塩類ナトリウム土壌の3種類のタイプが存在する8)。塩類土壌は土壊の水飽和抽出液の電気伝導度electric conductivity(EC)が4mS/cm(25℃)以上の土壌をいう。こ

 

 

 

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