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ンドン市の人口増加と拡大により転用され、また工業用地として売却されている。この結果、農家が所有する農地面積の減少と不動産としての価値を見越した土地の買い占めが増加する傾向にある。この傾向は西ジャワ州での農業実態を反映する結果である。

バンドン平野を流れるチタリウム川は工業用水として利用されるばかりでなく、145の工場群より排出される工場排水による汚染が進み、1990年には西ジャワで有数の汚染河川となった。チタリウム川上流に位置するチワレンケ用水周辺に存在する31の工場は工場用水としてこの用水より0.8t/秒を利用する。一方、この用水に水を供給するワンギサグランダムの供給能力は乾期には2t/秒、雨期には4t/秒であるが、約600haの潅漑面積に必要とされる潅漑水量は2t/秒であることから、乾期には潅漑水量が不足する。この結果、以前はチワレンケ用水により水稲の2期作と乾期の間作が可能であった潅漑地域でも乾期の用水不足により間作が不可能となり、さらには水稲も1作のみかろうじて可能である地域が増加している。特に用水路末端でこの傾向が著しい。さらにチタリウム川支流より直接潅漑水を採取する地域では、工場排水により汚染された河川水を直接導入するため、作物の生育障害だけでなく農耕地汚染の可能性も懸念される。

 

5 アジアの乾燥地の潅漑

 

地表からの年間蒸散量が年降水量を上回る地域を一般に乾燥地と呼ぶ。この地域での土壌生成は水による化学的風化をほとんど受けず、日温度較差による物理的な風化を強く受ける。その結果、水に可溶な塩類を多量に含んだ土壌が生成する。このような乾燥地土壌の分布を図3に示した。アジア地域にはインド北部からパキスタン、中国黄准海平原に分布する。乾燥地土壌では土壌水は下層から上層に向けて移動する傾向が強い。さらに強い物理的風化を下層まで受け、表層は砂質であるものの下層には粘土の集積した不透水層が存在し、水可溶性塩類が土層内に満遍なく分布している。

 

 

 

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