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より賄われたことが、他文明より長期に渡り継続した要因である。また、洪水による土砂の供給は農業生産に上述のような正の効果と、一方では、かんがい水路の埋没、地表面の上昇等の負の効果を及ぼし、塩類化、侵食をはじめとする様々な土壌劣化を引き起こした。

このように古代文明の衰退は全て土壌劣化がその主要因であり、農業の永続性を無視した土壌管理の不手際が文明の維持、発展を妨げることを証明している。人間による誤った土壌管理は砂漠化を引き起こし、砂漠化による土壌劣化は土壌侵食と塩類集積である。本稿ではアジア地域の水資源と食糧生産の現状および潅漑水としての水資源の利用が土壌劣化におよぼす影響と塩類集積についてその発生メカニズム、現状とその将来の展望を試みる。

 

2 アジアの自然環境

 

1) アジアの気候

農業生産を左右する因子の一つが気候である。気候区分には場所ごとの気候状態を示す指標として植物を考慮したケッペンの気候区分、気候環境が成立するメカニズムを重視したアリソフ気候区分などがある。図1にアリソフの気候区分を示した。赤道付近には一年を通じて雨が多く、降水の季節変動が少ない「赤道気団帯」が存在し、その高緯度帯には貿易風の影響を受け雨季と乾季を持つ「赤道モンスーン帯」が存在する。さらに高緯度では一年中ほとんど雨の降らない「熱帯気団帯」、次いで夏期は乾燥するが、冬期には寒帯気団の影響を受ける「亜熱帯」が存在する。東南アジア地域ではインドネシアのジャワ鳥北部を中心に「赤道気団帯」に属し、大部分の地域は「赤道モンスーン帯」に区分される。さらにインドから中国南部の広い範囲が「亜熱帯」となる。特筆すべきは東南アジアには砂漠気候に相当する「熱帯気団帯」が存在しないことが特徴であり、南アジアのインド西部が一部属しているだけである。

さらに久馬らは土壌水分レジュームを重視したソーンスウエイトの気候区分

 

 

 

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