たとえば、1980年代の間に全都市住民に安全な水を供給することを目的とした国連のInternational Decade for Drinking Water Supply and Sanitation(国際飲料水供給と衛生に関する十年)があった。1980年に水の供給サービス(水道)を得られない人が1億4,800万人以上いたアジア太平洋地域の都市で、このキャンペーンにより1億8,500万人の人々に水供給サービスを拡大するのに成功した。しかし1990年には都市の増加のため、水供給サービスを得られない人の数は1億7,500万人に上っている。
この問題は必ずしも水が無いという問題ではない。家庭の用水は、特に貧しい人々に対して消費する水の量は、全体用水からみると決して高くはない。「サービスを受けられない」人々は、それでもある種の水を使っている。限られた所得の人々が清潔な水のためにお金を支払うかということもできます。マニラの貧しい人々は所得の20%までをも飲料水を買うためにベンダに支払っている。一般的にアジアの貧しい地域の水のベンダによる「市場価格」は水道をひねれば水を飲める恵まれた人々の公定料金の何十倍にもあたる14。
ソウルは東アジアで最大の水ストレス国の首都であるが、まだ漢江に貯水ダムを建設する可能性があるために灌漑農業との問題はない。ソウルの水供給で最も深刻な問題はPaldang貯水池の流域にある住宅、工場、酪農場から流れ出る排水による水質の悪化である。都市にはこれらの問題に対処するため、水の浄化、新たな取水設備の建設、または地域中の水道からさらに多くの水を買うことなどの数多くのオプションがあるが、このどれもが供給のコストを高めることになる15。これはソウルだけの問題ではない。多くの都市は現在の水供給を高めるため、あるいはそれを確保するためにさえさらに一層の資金を投じなければならない。10の水不足都市を調査したところ、ラメシュ・バテイア氏とマリン・ファルケンマーク氏はアジアの7つの都市において「次」のプロジェクトのコストは「現在」のプロジェクトのコストの2倍を上回ることが予想されると指摘している16。