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丘脈が完成する。氷丘脈の作成後、氷板全体を再凍結させることにより、各層を互いに凍結させた後実験に供した。実験終了後の断面の観察では、最下部の数層が剥離する場合が見られたが、上部の層は凍着していることが確認された。ただし、剥離しない層にあっても、底部の氷は強度が低下していることが確認された。

試験は、図 2.3 に示した A、B、C、D の4種類の氷丘脈について実施した。これら4種類の氷丘脈は、積層数は異なるが、側面の傾斜角が 10 度程度となる、相似な断面形状を有する氷丘脈である。上記の4種類の氷丘脈に対して、それぞれ、0.234 及び 0.389 m/s の2速度状態についての試験を行い、合計8回の試験を実施した。これらの速度は、実船ではそれぞれ 3 及び 5 kn に相当する。各実験における氷丘脈の長さ及び最大厚さを表 2.1 に示す。

実験結果の一例を図 2.4 に示す。同図は上より、それぞれ、pitching、heaving 及び船首部 FP における船体の上下運動量の経時変化を示したものである。図より、氷丘脈への進入に伴って、抵抗及び船体運動が急激な変動を示すことが判る。特に船首部の上下動は大きく、船底部が水面近傍に来るまでに船首部が持ち上げられていることが判る。

 

2.2 考察

本研究では、本船の氷丘脈中における航行特性を評価するために、氷海水槽における抵抗試験試験を行った。抵抗試験では模型船は一定の船速で曳航される。これに対し、氷丘脈を通過する際の実船の運動は、上述のように船速が低下し、時には停船に至る場合もある。従って、氷丘脈中の抵抗試験により得られた抵抗値に基づく単純な議論は、氷丘脈中における性能の評価には適当ではない。このため、氷丘脈中におけるエネルギー消費という観点から試験結果を解析した。抵抗試験において、時間からまでに模型船が消費するエネルギーは、抵抗を用いて次のように計算される。

 

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ここに、は模型船速度である。図 2.5 に氷丘脈中における抵抗変化の例を、図 2.6 にこれから計算されるエネルギー消費の時間変化の例をそれぞれ示す。図の中央部のエネルギー消費の急激な立ち上がりが氷丘脈中における抵抗増加によるものであり、氷丘脈中でのエネルギー消費量が図 2.6 に示されたように計算される。また、氷丘脈による消費エネルギーの立ち上がりの前後におけるエネルギー増加率の比較的緩やかな部分は平坦氷中の抵抗によるものである。図 2.7 に氷丘脈の断面積と消費エネルギーとの関係を示す。消費エネルギーは氷丘脈のサイズの増大に伴って増大し、また、船速が高い方が消費エネルギーも高い。なお、図 2.6 中の破線は、氷丘脈前後の平坦氷中における抵抗に相当する直線である。すなわち、任意の距離を航行したときに消費されるエネルギーを、その距離と氷厚の積で与えられる面積の関数として示したものである。

前述のように、氷丘脈中の航行においては抵抗の増大による停船の後、ラミングを繰り返して通過を図る場合がある。このような状態において、氷丘脈を通過するために必要なラミングの回数は、氷丘脈の突破性能を評価する上での一つの指標となろう。ここで、それぞれのラミング時に船体が有する運動エネルギーの総和が氷丘脈を通過するために必要

 

 

 

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