図1 氷海域航行支援のための氷況情報システム
5.2 海氷移動・分布の数値予測プログラム
このプログラムは、地上から送られてくる海氷データと気象データを用い、航行予定の海域の海氷の密接度、氷厚、氷盤の大きさなど航行に必要となる氷況情報を予測する流氷運動の数値計算プログラムで、計算時間、利便性など実用的観点から東京大学が開発したDistributed Mass/Discrete Floe(DMDF)モデルを、海氷の移動・分布の数値シミュレーションの基本モデルとした。
5.2.1 Distributed Mass/Discrete Floe(DMDF)モデル
DMDFモデルは流氷の運動や、流氷と流氷及び流氷と海洋・沿岸構造物との相互作用の数値解析モデルで、海氷の生成・消滅を無視する海氷の力学的モデルである。流氷を長方形の氷の集団、即ち氷群に分割し、氷群の移動と変形の数値的解析を通じて、流氷の変動をシミュレーションする。風・海流による剪断応力、コリオリ力、氷盤の形状抵抗力及び流氷の相互作用による内部応力を氷群の移動及び変形に関与する外力としている。流氷の相互作用力(内部応力)は氷群間の衝突、及び流氷の横移動による氷群の運動量の変化から定式化し、氷群の質量と氷の密接度の移動にはSemi-Lagrange方式を採用する。流氷の流れに及ぼす海流の影響を直接考慮するため、流氷の流れと海水の流れの同時解析を行う。また、海面での海水の流れをより正確に評価するため、多層モデルによる海流の解析を行っている。