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3.4 運航経済性評価

 

3.4.1 目 的

 

第2章において述べた様にINSROP BOX-Bにおいて検討が進められている経済性評価の総合シミュレーションの前段の検討として、どのパラメータが経済性にどの程度影響するかを定性的に把握しておくことを目的に、本船を対象にした経済性の概略検討を実施した。

今年度新たに計画した氷海用商船に関し、模型試験(第3.3章)によって開水中及び氷中での基本性能を把握することができた。開水中航海速力は、設定したNSO 21,750PS(15%シーマージン)に対して16.4knotsであり、目標とする17knotsの船速を出すためにはNSOとして25,000PSの馬力が必要であると推定された。また、1.2mの氷を3knotsで連続砕氷するための馬力は約20,500PSと推定された。主機馬力としてMCO 28,000PSクラスのエンジンを搭載することにより、本船は計画した砕氷能力、および開水中性能を満足すると考えられる。本船のNSR経由航海は、従来船のSUEZ経由航海と比較して航海日数的には有意なメリットが現れると推察される。

しかしながら商用ベースで本船の運用が従来船の運用と比較してメリットが出せるかを見るためには、建造に絡む船主の資金運用や燃費、港湾費等のオペレーションコストを考えた経済性評価を行う必要がある。一般的には、貨物輸送費のマーケットプライスが輸送に絡むトータルコストに対して適切な採算が取れるかを評価すべきであるが、マーケットプライスはバルク貨物の中でも貨物種によって大きく異なり、また時間的な変動も大きい。そこでここでは、輸送貨物単位重量当たりのコストについてSUEZ経由航路との相対的な比較を試みた。

 

3.4.2 計算条件

 

(1)航海距離

横浜-Hamburg間 直行

・NSR経由航路:3.2.2で設定した航路、航海距離 7,250NM(片道)

・SUEZ経由航路:11,845NM(片道)

 

(2)対象船

比較するSUEZ経由航路の従来型バルクキャリヤーも本船と同じ載貨重量であると仮定し、建造船実績データから速力、馬力等を決めた。また、氷海用商船の船価は鋼材重量の増加、主機馬力の増加によって従来船を上回る。ここでは船価が輸送コストにどのような影響を及ぼすのか、その傾向を調べるために船価を数ケース想定して計算することにした。船価として従来型バルクキャリヤーと同じ船価の場合、25%増しの場合、50%増しの場合の3ケースを想定した。

 

 

 

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