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また、巡航速度よりも低速での航行でもスプレーの高さが乾舷高さを超える場合があり、

ピーク領域での高さは一般的な bulwark 高さを充分に超える位置にまで達する。このような場合、気温及び相対風向・風速によってはかなりの量の船体着氷が発生する可能性があろう。

今回の水槽実験により得られた情報は、あくまで船体上への海水の流入量に対する指針であり、これを実際の着氷量の推定に結びつけるためには船首部のスプレーによる打ち込み水及び飛沫に起因する船体着氷の発生・成長メカニズムに対する充分な理解が必要である。しかしながら、航空機あるいは陸上構造物に対する着氷現象に比較して、現状では船体着氷に対する研究は充分なものがあるとは言えない。これは、これまでは荒天・寒冷海域における船舶の航行量が限られ、船体着氷が問題となるような事例の発生が少なかったことに理由があろう。しかしながら、サハリンをはじめとするロシア極東地域における各種開発の活発化、北方四島近海における漁業規制の緩和等の流れを考えるとき、オホーツク海における海上交通量は近い将来飛躍的に伸びることが予想される。このような状況の変化は船体着氷に対する研究需要を喚起し、その研究により得られた知見は本船のような北極海航路における航行を想定した船舶の設計に反映されるものと考える。

 

 

 

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