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ただし、本計算により得られる量は波浪中における抵抗増加量である。このため、波浪中におけるスラスト減少量が平均的に平水中におけるものにおいて近似できると仮定して、スラスト減少係数tについて平水中における水槽実験結果から1-t=0.8として抵抗増加量をスラスト増加量に換算した。

波長の変化に対するスラスト増加量の変化は、実験結果と計算結果ともに同様の傾向を示し、λ/Lpp=1近傍においてピークを示す。ただし、船体運動同様、計算結果ではスラスト増加がピークを示す領域がフルード数により微妙に変化するのに対し、実験結果ではこのような変化は明瞭には認められない。また、計算結果では短波長領域においてスラスト増加係数にハンプが見られるのに対し実験ではこのような傾向は認められない。しかしながら、ピーク近傍の領域を含めて全体的に計算結果と実験結果との間に比較的良い一致があると言えよう。

最近の砕氷・耐氷型の船型の傾向としては、砕氷効率の向上を目的として、従来の楔形の船首形状から、スプーン・バウ的な特徴が加味されたやや丸みを帯びた船首形状が採用されることが多くなっている。このような blunt な船首形状は波浪中での抵抗増加が懸念される。事実、本研究の前段階として行われた各種の船型に対する水槽試験結果では、スプーン・バウ型の船首の波浪中の抵抗増加が示されている。しかしながら、このような観点から本船についての実験結果を他の通常船舶に対する結果と比較すると、特に顕著な抵抗増加の傾向は認められない。例えば、最近造船所で建造されているCB=0.83のバルク船型に対する実験結果を例に採ると、式 (3.3.7) で与えられるスラスト増加係数のピーク値はフルード数 0.13に対して8.4程度であり、本船よりも大きなスラスト増加を示している。波浪中における抵抗増加はL/B、CB等の船型パラメーターあるいは波浪条件等により影響を受けるため、このような単純な比較は妥当ではないかもしれないが、他の実験結果を概観しても、本船の波浪中推進性能は通常の船舶に比べて大きな遜色の無いものと言えよう。これは、前回の研究の中で試験に供した船型の中から比較的楔形に近い船首形状である、D 船首を基本として本船の船首が設計されていることによろう。

 

 

 

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