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的に増加していることが一般的に認められている。これらの増加をもたらした理由としてさまざまな説明がなされているが、それらは次のようなものである。

a)海流や嵐によって種が分散した。

b)人間の活動によって、有害な藻が淘汰したり急増したりして、沿岸近くの海水が富栄養化した。

c)養殖業の増加により、周辺の海水が富栄養化し、藻の成長を促進した。

d)養殖業が発展し新しい漁業資源の導入がなされたことにより、以前は赤潮問題に無縁であった海水に土着の有害な藻が発生した。

e)船の底荷付近の海水や貝の種子の活動によって、赤潮の種が分散した。

f)気温や風速、日光の差し込み具合などの長期的な気候上の傾向による。

g)沿岸近くの海水や漁業産品に対する科学的でかつ規定された調査活動が増加し、新しい毒素や毒をもたらす未知の事象を発見する科学的分析能力が向上した。

 

こうした変化が示していることは、漁業資源の持続や養殖業の発展、海産食品に対する一般の消費者の信頼という観点からだけではなく、APEC 政策の将来という観点からも非常に重要なことである。APECの目標の1つは加盟国間で自由貿易を助長することであるが、その目標を達成させるためには魚介類の産品が APEC 域内でスムーズにかつ無制限に移動できるようにし、貿易の障壁を取り払わなくてはならない。APEC 域内では共通の監視方法や観測制度がないため、海産食品の安全性を保証する能力が国ごとに大きく異なっており、ゆえに赤潮はこの目標の達成にとって深刻な障害となっている。同様の問題をヨーロッパ経済共同体(EEC)も抱えており、EEC は最近、監視や観測の方法を統一して相互に測定し合い、調査を行う役人や科学者を教育し、コミュニケーションネットワークの設立や、毒素を持つ赤潮の脅威にさらされている漁業資源を管理するための同水準の技術をEU加盟国に普及させるなどの計画を実行している。赤潮や HAB 問題に対するさらなる地球規模での認識の現れは、ユネスコの政府間海洋委員会(IOC)が国際的に有害な藻の発生に対処する計画を立てそれを遂行することによって、IOC 加盟国の要求に応じたことである。

 

APEC域内の重大な問題の1つは明らかに、赤潮が沿岸の汚染と並行して増加していることである。例えば、香港のトロ(Tolo)港では河川流域の人口が 1976年から 1986年の間に6倍にも膨れ上がり、その間観測された赤潮発生数は8倍にも増加した。その原因は、人口増加に伴って海水汚染が進行し、それによって海水の富栄養化がもたらされたことにあると推測されている。同様のパターンが日本の瀬戸内海に関する研究においても観測されている。瀬戸内海では目に見える赤潮が 1965年から1975年にかけて44件から300件以上にも増加し続け、それは汚染によって海水の富栄養化が進んだパターンと一致している。日本当局は 1970年代半ばに流出規制を制定し、その結果赤潮の発生数は50%削減された。このことは汚染と赤潮の発生率に直接的な関係があることを示している。

 

もちろん、毒素を持つ赤潮がそれまで汚染されていなかった海水に発生することもあるが、大概の場合は人間の活動によって海水が富栄養化したことが原因となっている。赤潮現象が拡大している事実を認め、赤

 

 

 

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