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アラスカの貝資源の経済的損失は、貝産業が 1917 年以降も継続されていたとすると、1年当たり少なくとも5000万ドルになると見積もられている。

・中国の台北では、1986年以降数種類の PSP が発生している。ムラサキガイがその被害を受け、その被害額は100万ドル以上であり、また消費者が貝や海産食品を3年から5年の間避けるという状況が続いた。

・マレーシアでは、1983年と1985年における赤潮によって養殖の子えびが大量死し、その経済的損失は2500万ドルになると見積もられている。

・フィリピンでは、1983年と1987年、1988年の PSP の発生により、ムール貝産業は直接打撃を受け、その被害額は1年当たり500万ドルと見積もられている。またムール貝に対する悪評判が蔓延していた時期、人々が安全な海産食品までをも避けたことからムール貝産業が受けた損失と同等の損失を海産食品市場も被った。

・赤潮の発生による魚の大量死は、西カナダにある鮭の養殖場でまず最初に起こった。1987年だけで養殖の鮭の 19 %が珪藻の発生によって死に、その被害額は 390 万ドルと見積もられる。ラフィド藻(緑色鞭毛藻)ヘテロシグマカーテラエ(Heterosigma carterae)が引き起こした養殖の鮭の大量死の被害額は1100 万ドルを越える。

 

1.2 傾向

 

赤潮が APEC 地域の抱える重大な問題となった一つの理由は、毒素を持つ貝の問題や魚や子えびの大量死が、野生、養殖にかかわらず急速にAPEC域内で広がったからである。渦鞭毛藻Pバハメンス(P. bahamense)が関係しているPSP問題の一時的拡大は、赤潮問題を抱えるに至った理由の良い例として挙げられる。最初に APEC域内でPSPの発生が記録されたのは、1972年のパプアニューギニアにおいてであった。この問題はその後ブルネイとサバで 1976年に発生し、続いて1983年にインドネシアで、その後フィリピンの中央と北部で、1987年グアマテラの太平洋岸で、1989年コスタリカで、1992年メキシコで、そして最も最近起こったのは1993年のマレーシア半島においてである。上述の初期の発生はすべて繰り返されておりさらに拡大する場合も多く、実質的に赤潮の発生は今日まで継続している。例えばフィリピンでは、1983年の最初の発生以来、12の地域において継続して発生したPSPが26件も数えられている。この傾向は実に深刻な問題であり、ちなみにこの現象は1種類の生物が原因である赤潮の1形態にすぎない。より毒素を持ち有毒な種が多く存在しており、それらを原因とする問題がすべてのAPEC加盟国において浮上している。

 

APEC地域における赤潮と毒素を持つ藻の問題の状況は、ここ20年の間明らかに変化しつつある。以前は、APEC加盟国のうちの数カ国のみが部分的な被害を受けていたが、最近ではすべてのAPEC加盟国が脅威にさらされ、地理的に広範な地域が1種類以上の有害または毒素を持つ藻の種によって侵されている。毒の発生数や毒の発生による経済的損失、毒に影響を受けた資源の種類、毒素と毒を持つ種の数は、すべて劇

 

 

 

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