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制、研究支援体制の確立が求められている。海上保安庁、気象庁、水産庁、環境庁などの行政機関が行っているモニタリングは、環境基準、水質基準、排出基準などに現状が適合できているかを監視するものであり、行政モニタリングに加えて、研究的モニタリングを推進することが肝要である。

高次の食物連鎖を形成する生物・生態系の局部への影響を総合的にモニターすることが求められており、様々な階層のコミュニティーを、多数の方向性からの切り口で、多種多様なモニタリング手法を組み合わせて行っていく必要がある。

モニタリングによって得られるデータを利用したモデリングや予測も推進する必要がある。現在の物質循環の数値計算モデルや大循環が被る影響モデルには説明できない点が多く、来るべき21 世紀の海洋環境を予測検討するためには、観測データや生化学的、生理学的実験データを盛り込み、予測数値モデルの開発も進めていかなければならない。

 

(3) 赤潮、青潮問題

流入域に人口が集中し、活発な産業活動が行われている場合、窒素やリンなどの流入による富栄養化、有機物質の流入による有機汚濁を考えなければならない。排水の規制が、濃度規制から総量規制に変更され、海水中に含まれる窒素やリンの濃度が減少し、赤潮の発生件数も減少が見られている。しかしながら、赤潮の問題、貧酸素水塊の問題は依然として重要な問題であり、解決されていない。また、近年は貝毒・有害プランクトンも国際的に非常に大きな問題となっている。

赤潮の研究も、群集生態学的アプローチに変わってきており、プランクトンの繁殖に関する知見も蓄積されてきている。また、生理生態学的研究に基づく赤潮発生機構と、長期間の気象観測データから高確度の赤潮発生予察が可能となっている事例も報告されている。今後は、赤潮発生頻度が高い地域に予察範囲を広げるため、長期間の気象観測体制の整備と予察法の検討が求められる。さらに、赤潮の予察を活かし、経済的な被害を防ぐためには、養殖魚を逃がす手法の開発と、赤潮に対する魚の耐久力を高めさせる手法の普及が必要である。移動式生け簀の開発も再開する必要がある。

また、有害プランクトンの発生も深刻な問題である。貝や、貝を食べた生物に害を及ぼすプランクトンの発生は、大きな経済的被害を生じさせるだけでなく、生命にも重大な影響を及ぼすことがある。国際的にも大きな問題として取り上げられており、APEC においても、有害プランクトン細胞の検出法開発(プランクトンの抗体検出法、DNAプローブを用いた分子生物学的検出法、吸光・蛍光分析を用いた検出法)や毒素の検出法開発(組織細胞や個体生物を用いたバイオアッセイ、HPLC 分析、免疫学的検出法)、モニタリング手法の開発、公衆衛生の向上が提言されており、研究開発の一層の推進が求められている。

 

(4) ゴミや汚染物質による海洋汚染問題

人間生活によってもたらされたゴミや汚染物質によって、海洋汚染は深刻さを増している。分解されにくいプラスチックは半永久的に存在し続け、飲み込んだり絡まったりした鳥類や海洋生物を死にいたらしめる

 

 

 

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