5.7 対策例まとめ
環境問題としての重要性と研究開発の必要性、研究開発動向を含み今後に研究開発の推進を図るべき手法例について検討した。本調査研究報告は海洋環境問題への対策の全てを示すものではないが、取り組みの有効性が高く、研究開発が求められている対策手法の一例を提示する(表 5-9)。
●ホルモン撹乱物質による内分泌異常(環境ホルモン)
●生態系への影響、生態系・生物の多様性保全、海洋における物質循環
●赤潮、青潮問題
●ゴミや汚染物質による海洋汚染問題
●地球温暖化による海洋環境
への影響の各重要問題に関する課題を要約すると以下のとおりである。
(1) ホルモン撹乱物質による内分泌異常(環境ホルモン)
環境中に放出される化学物質の中には、内分泌系に影響を及ぼすものがあることが分かってきており、生物・生態系への影響評価の確立と原因物質の特定、排出抑制策の策定が求められている。
この中で、生物への影響評価手法の確立が基本かつ第一の課題であり、研究開発の推進が必要となっている。内分泌撹乱化学物質による影響は無脊椎動物と脊椎動物で大きく異なっており、脊椎動物の生殖や発生に関する問題のほとんどはオスに対する女性ホルモン様作用である。従って、オスのメス化を調べ、化学物質による影響を評価する手法が強く求められる。
ニジマス、コイ、マコガレイなどを生け簀に入れて観測地点に置き、血清中のビテロゲニンを調べる手段が有効であると考えられるが、測定用の生物種として何が有効であるかの検討は未だ行われていない。生物種の選定と測定、モニタリング手法の確立、そのための抗体など基盤整備、試行的な実地測定の実施が必要である。
また、ホルモン様物質の作用についての研究についても積極的な取り組みが求められる。内分泌撹乱物質がどのようにホルモン受容体に作用して、どのような細胞内情報伝達を引き起こすのかは、大きな研究テーマであり研究の推進が求められている。
(2) 生態系への影響、生態系・生物の多様性保全、海洋における物質循環
海洋生態系への環境汚染物質の負荷を評価し、生物・生態系が被る影響を評価することは極めて重要であるが、容易なことではない。海洋生態系の構造や海洋における物質循環について科学的に解明されていない点が多いためである。
この分野の取り組みには、広域で長期的なモニタリングデータが不可欠であり、長期的なモニタリング体