? 一次影響
温暖化に伴う海面上昇は多くの要素が関連した問題であり、上昇幅の将来予測には不確実さが多く残されている。海面変動には地域差があり、地球規模の海面上昇が一様にあらわれるものではない。
北半球の日本近海を例に考えると、黒潮は右回りの転向力を受けている。黒潮の流れに対する転向力と釣り合うように、海面には勾配が生じる。このため日本では、温暖化影響で黒潮が速くなれば、むしろ海面は低くと予想されているのである。
また、局所的な地盤沈下も問題となる。このため、この分野では、
・氷床が解けて 海面が上昇する
・海流が変化して海面勾配が変わる
・温度分布が均一でないために、海面上昇幅がまだらになる
・海面上昇によって地盤沈下が減少する
ことを検討し、ローカルな海面変化がどうなるのかの研究が主題として残されている。地域的な海面上昇を予測するための精密なシミュレーションモデルを開発することが、主な研究テーマとなる。海水の熱膨張と山岳氷河など陸上の氷塊の溶解によって生じる海面上昇を、海流の変化、転向力の影響、大気パターンなどを含み入れて地域レベルで予測することになる(図5-17)。また、シミュレーション結果を基に気候変動予測をシナリオ検討するのも一つの大きな研究テーマとなる。