ヘテロカプサは、500cells/ml(1ml中に500細胞)の密度で貝を殺すため、目に見える赤潮(>1000 cells/ml)となっては既に遅い。被害の防止には早期発見が極めて重要であるため、低濃度の赤潮検出法の開発が求められている。
以前は、赤潮によってエビや貝が、むしろ豊漁になったとの報告もあった。しかし、貝類を主体とした大きな被害で問題は深刻化した。通常の赤潮の被害額は、一件 2〜3億円であるが、英虞湾で発生したヘテロカプサは一度に30〜60億円の被害をもたらした。
(9) プランクトンによる貝の毒化
貝の毒化によって、総生産量の 30 % もの被害を生じたところもある。昨年の3月に発生した五島の貝毒は、未だ消えてはいない。貝毒はフグ毒に似ており、人体に取り込まれると末端からしびれを感じ、やがて中心におよび、やがて内蔵機能が停止して死をもたらすこともある(参考資料1)。
毒性赤潮が発生すると、毒がなくなってから3週間は出荷停止が続く。西日本では2週間のところもあり、水産事業者にとって2週間と3週間の差は大きく、問題にもなっている。
(10) 赤潮、有害プランクトンに関する国際的課題
赤潮・有害プランクトンの問題は、APEC(Asia Pacific Economic Cooperation;アジア太平洋経済協力会議)の海洋資源保全部会の第一プロジェクトに採択されている。この中では、物理的要因から問題を引き起こす赤潮(Red Tide)と、魚介類および魚介類を食べた人間に害をもたらす有害藻類 HAB(Harmful Algal Bloom)問題を同義に取り上げ、通商障壁の除去と公衆衛生の向上を目指した行動指針を提言している(参考資料2)。
現在、APEC 諸国・地域から日本へ30万トンの貝などが輸入されており、日本の輸入額は年間5兆円に達する。輸出国・地域は、輸出産物に貝毒が含まれないように自主的に規制を設けているが、測定法の不備