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しかし、高確率で予察が行えるのは、長期的な観測(塩分量、水温、底層温度、気圧など)が行われ、且つ、赤潮の発生との間の相関が解析されることが求められる。播磨灘の予察も、14年間に亘る観測データを用いた解析によって高確度の予察が可能となっているのである。このような予察が可能な事例は非常に少なく、むしろ、予察ができていないところが多い。第一歩として、特定地域で確立された予察法をまず適応して確度を検証するだけでも有効と思われるが、それでも観測と検証に少なくとも5年位は必要となる。地域特性を含めた制度の高い予察法の確立に向けた、長期的な観測体制の整備が求められている。

 

(6) 赤潮の防止

赤潮の発生件数自体は 1970 年代に比べて減少している(図5-11)。栄養塩の排出に規制が設けられたことは、赤潮の防止に効果をあげている。根本的な赤潮対策としては、N、P の流入量を減少させることである(図5-7)。

赤潮の発生メカニズムは分かっても、発生を止めるのは難しい。10年程前から、水産庁漁場保全課が、考えられ得る限りの防止対策を試行したが、いずれも有効な対策手段となっていない。小さな入り江を対象とするならまだしも、海を相手にするのは広域すぎるということだろう。

(試行された赤潮発生防止対策例)

・水をまいて塩分濃度を下げる………広すぎてまけない

・電極をさして塩素を発生させる……有用生物がいるところではできない

・粘土をまいて底層の栄養塩をふさぐ……一時的

・発生した赤潮プランクトンの除去………吸い取ってもすぐに増える

・活性酸素の添加

・バクテリアや捕食生物の散布

・銅の散布

 

(7) 有効な赤潮対策

赤潮の発生が防げないとすれば、水産有用生物を殺さないようにすることを考えるべきであろう。赤潮発生の予察に基づき、「逃げる」「絶食させて耐久力を高める」ことが肝要である。

○ 逃げる

赤潮は 1〜2 週間が山なので、貝や魚を避難させる。

○ 絶食

赤潮の発生前に魚を絶食させておくと、赤潮が発生しても魚が死ななくなる。

絶食させると魚の成長が遅く、油ののりも悪くなるので養殖業者がやりたがらない。赤潮で死滅させるよりは効果的であるので、広めていくべきであろう。

また、逃げやすいような生け簀の開発は、以前に香川県水産試験場によって開発が行なわれていたが、現在は中断している。沖へ持っていっても係留できるもの、移動速度が速いものが望ましい

 

 

 

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