本会議でも、口径56mm、長さ14.3mのダイポールコイルを1.9Kの超流動状態で使用し8.4Tの磁場を発生した試験結果など、多数の論文が発表された。
また、Nb3Snを用いたダイポールコイルについても研究が継続されており、11Tの磁場を発生した結果がオランダのTwente大学から発表されている。
このほか、クオドポールコイルや薄肉ソレノイドコイルに関する発表も行われている。
LHCの今後の予定は、次のようになっている。
5. 核融合
日本、EC、米国、ロシアの4ヵ国共同事業として国際熱核融合実験炉ITER (International Thermonuclear Experimental Reactor)計画が進められている。
超電導の応用として、プラズマを閉じ込めるためのトロイダルコイル、プラズマに電流を誘起するためのポロイダルコイルがある。いずれも強い磁場が要求されるため、線材としてはNb3SnあるいはNb3Alが用いられる。
本会議でもITER関係の多数の論文が発表されたが、線材一つをとっても、陸上用として作られているため大型で重く、コンパクトで軽量であることが要求される船舶や浮上式鉄道用の線材としては、そのまま適用することはできない。
6. 電力貯蔵
昼夜の電力需要のアンバランスを解消することを目的としたGW級の大規模な超電導電力貯蔵SMES(Superconducting Magnetic Energy Storage)の研究に代わって、ヨーロッパを中心としたkW級のμSMESおよび日本を中心としたMW級のSMESの研究が行われている。
これらは、系統の安定度の向上や変動負荷の補償を目的としたものであるが、製造コストや運転コストあるいは信頼性などの面で、既存のシステムと対抗できるかが問題である。
7. 超電導材料
加速器や核融合関係を中心にNb3Snコイルの発表が行われた。
前述したようにオランダのTwente大学では口径87.8mmのダイポールコイルで11Tを達成している。
また、当財団と高エネルギー加速器研究機構との共同研究で実施している「Nb3Sn巻線技術の開発」で製作したコイルを、米国ローレンス・バークレイ研究所の高磁場発生装置